・7.アルコール代謝と食事
ADHに主経路の反応で、アルコールが、アセトアルデヒドに代謝されると、NAD+が、NADH2+に、還元される。
NADH2+は、NAD+に、再酸化される必要がある。。
カタラーゼやMEOSによる副経路の反応では、NADH2+は、NAD+に、再酸化される必要がないので、ミトコンドリアの酸化系に依存しない。
その為、副経路の反応では、アルコールのアセトアルデヒドへの代謝速度が、速い。
しかし、アセトアルデヒドが、さらに、ALDHにより、酢酸に代謝される反応では、NAD+が、NADH2+に、還元される。ミトコンドリアの電子伝達系で、NADH2+が、NAD+に、再酸化されないと、アセトアルデヒドが蓄積する恐れがある。
空腹時には、脂肪酸のβ-酸化系が亢進し、NADH2+が生成され、電子伝達系で、NAD+に酸化される。
空腹時には、脂肪酸のβ-酸化系で生成されるNADH2+が酸化される為、エタノールが、ADHやALDHにより代謝される際に生成されるNADH2+が、NAD+に、再酸化されにくく、エタノールの代謝速度が、抑制される。
その為、空腹時に飲酒すると、アルコール(エタノール)の代謝(分解)が遅延して、早く酔ったり、長く酔いが続くと言われる。
食事を食べながら飲酒すると、悪酔いしない。
また、アルコール常飲者では、カタラーゼやMEOSによる副経路の反応が亢進して(カタラーゼやMEOSの酵素活性が亢進している)、エタノールからアセトアルデヒドへの代謝は、促進され、アセトアルデヒドが蓄積しやすい。
そして、空腹のまま、大酒をすると、ALDHに必要なNADH2+が、NAD+に、再酸化されにくく、アセトアルデヒドが、ALDHにより、酢酸へ代謝されないので、アセトアルデヒドによる肝障害を起こし易くするおそれがある。
飲酒前後に緑茶を飲むと、二日酔いが予防されると言う。
緑茶抽出物は、アルコールの代謝を促進させ、(血中の)アルコールやアセトアルデヒド濃度を低下させる。
緑茶に含まれるカフェイン(苦味成分)は、肝臓のアセトアルデヒド分解酵素(=ALDH)の活性を亢進させ、アルコールやアセトアルデヒドの分解を促進させる。カフェインは、高温の御湯の方が、溶け出し易い(苦味が強くなる)。
緑茶に含まれるカテキン(渋味成分)は、胃からのアルコールの吸収を抑制する。
カテキン類の含量は、煎茶(せんちゃ)が多く、玉露や抹茶は少ない(カテキン類は、茶葉が日光に当たると増加する)。
なお、緑茶に含まれているテアニン(アミノ酸:旨味成分、甘味成分)は、茶葉が、日光に当たると、カテキンに変化してしまうので、玉露や抹茶に多く含まれている。
テアニンは、グルタミン酸(Glu)に似たアミノ酸であり、神経細胞のグルタミン酸受容体に結合し、神経細胞死を抑制すると言う。
カフェインやカテキンは、高温(90℃)の御湯の方が、溶け出し易く(渋味が強いが香りは良い)、テアニンは、低温(50~60℃)のの御湯の方が、溶け出し易い(旨味がある)。
コーヒーは、毎日1杯以上飲用すると、アルコール性肝硬変の発症を抑制する。
特に、コーヒーを毎日4杯以上飲用すると、アルコール性肝硬変の発症率が、5分の1に低下する。
コーヒーを飲用していると、血中のASTなどの肝臓由来の酵素値は、低下する。
アルコール性肝硬変の発症には、大量の飲酒だけでなく、性別(女性の方がアルコール性肝硬変を発症し易い)、栄養状態、食事内容など、他の因子も関与すると考えられている。
コーヒーに含まれる何らかの成分(カフェイン?)が、アルコール性肝硬変の発症を予防すると考えられている。
ゴマに含まれるセサミンは、アルコール分解(アルコール代謝)を促進し、飲酒後の血液中からのアルコール消失を促進する(悪酔いの原因となるアセトアルデヒドによる毒性を、軽減させる)。
焼酎は、アルコールとして、エタノールのみを含み、アルデヒドに分解され易いので、二日酔いし難いと言う。