毒を貯める植物 -植物はなぜ重金属を貯めるのか?-2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・研究に使用した植物は北米に自生するアブラナ科の植物Stanleya pinnata(スタンレヤ・ピナータ)です(写真1)。

この植物はこれまでの研究から土壌汚染物質の一つであり,また金属の一種であるセレンを高蓄積することが知られています。

実際に野外に自生しているスタンレヤ・ピナータのセレン含量を測定したところ,土壌中のセレン濃度が6ppmの時にこの植物の葉におけるセレン含量は3,000ppmになっていました。

そこで私達のグループではこの植物がなぜセレン高蓄積性を持つのかについて生態学的な視点から解明することを目的に研究を進めました。

この疑問に対する一つの仮説として,この植物は重金属の蓄積により外敵からの防御を行っていること,が考えられました。

この仮説の一例としては,ニッケルのハイパー・アキュミレーター植物が,葉にニッケルを高蓄積することによりカタツムリからの葉の食害やバクテリアの感染を防いでいることが挙げられます。

そこでスタンレヤ・ピナータにおけるセレン高蓄積性は,外敵からの食害を軽減する働きを持つことを仮説として立てて,それを検証することを目的としました。この植物に対する食害はコロラド州の草原では主にコナガの幼虫とプレーリードッグにより行われていると考えられています(写真2)。

そこでこれらの食害に対するセレンの影響について調べました。

コナガの幼虫による食害について調べるため,セレンを与えずに又は25ppmのセレンを与えて10週間育てたスタンレヤ・ピナータ及び近縁種のStanleya albescens(スタンレヤ・アルベセンス)の葉をコナガの三齢幼虫に与えてその死亡率を調べました。その結果,スタンレヤ・ピナータではセレンの有無にかかわらずコナガの幼虫の3日後の生存率は20%だったのに対して,スタンレヤ・アルベセンスでは60%以上でした。また,プレーリードッグの食害に関しては植物に対する噛んだ回数と食べられた葉の面積を指標としました。

25ppmのセレンを与えて10週間育てたスタンレヤ・ピナータの葉をプレーリードッグが噛んだ回数はスタンレヤ・アルベセンスの半分以下であり,その間にスタンレヤ・アルベセンスの葉が60%食べられたのに対してスタンレヤ・ピナータの葉は5%しか食べられませんでした。

以上の結果からスタンレヤ・ピナータにおけるセレンの高蓄積性はプレーリードッグによる食害を防ぐ効果があることが明らかになりました。

ところが,コナガの幼虫の生存率に関してはスタンレヤ・ピナータにおいてはセレンの高蓄積性の有無にかかわらず同じような減少傾向を示したことから,コナガによる食害に対しては,セレンの蓄積により食害から身を守るという仮説は成り立ちませんでした。

なぜでしょうか?
写真省略