経皮感作による食物アレルギー | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム13
食物アレルギー―これからの展望,ガイドライン2011に向けて―
座長:池澤善郎1), 栗原和幸2)(横浜市立大学附属病院皮膚科1), 神奈川県立こども医療センターアレルギー科2))

S13-4.経皮感作による食物アレルギー

松倉節子1), 池澤善郎2)
横浜市立大学附属市民総合医療センター皮膚科1), 横浜市立大学附属病院皮膚科2)


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 2008年Lack G.により提唱された“Dual Allergen Exposure Hypothesis”はこれまでの経口摂取による腸管感作が主体と考えられてきた食物アレルギーの概念を一新した.

経消化管による食物暴露(経口摂取)は免疫誘導を促進し,皮膚への食物の接触が食物アレルギーの感作促進や症状増悪を惹起するというこの新しい概念が提起されて以来これを支持する報告の集積が盛んである.

食物アレルギーの分類には,従来の食物の経口摂取から消化管での感作が成立し発症するクラス1タイプ,そしてLatex-fruits syndromeやPollen-food syndromeに代表される天然ゴム製品中のラテックスタンパクあるいは飛散抗原である花粉による経粘膜・経皮感作が先行して成立し,交叉抗原である食物の経口摂取により発症するクラス2タイプのものに大きく大別されてきた.

これらの機序に加え,近年クラス3とも呼ぶべき食物アレルゲンそのものの経皮感作により発症する食物アレルギーが注目されている.経皮感作を容易にする機序としてはアトピー性皮膚炎における皮膚角層のバリアー障害,特に近年は角層の構造タンパクであり,保湿因子の役割も果たすフィラグリンの遺伝子異常が注目されている.

アトピー性皮膚炎ではこのような皮膚のバリアー障害があるために顔や手など食物が容易に付着する部位の皮膚から感作が成立するのではないかと推察されている.

この経皮感作の機序は小児の食物アレルギーだけにとどまらず成人においても注目されている.

我々もアトピー性皮膚炎や調理師の手湿疹を合併した調理による接触感作が疑われる果物や野菜などの接触蕁麻疹,口腔アレルギー症候群,アナフィラキシーの症例を経験している.

さらに最近注目されている報告のなかに,洗顔石鹸中の加水分解小麦タンパクの経皮感作による発症が考えられる小麦依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)がある.

このスキンケア製品使用後の相次ぐFDEIAの報告は皮膚アレルギー診療に携わる医師にとっても驚くべきトピックスであった.

さらに我々は化粧品に含まれる蛋白成分で生パパイヤから抽出されたパパインの経皮感作による接触蕁麻疹と引き続いて発症した多種の果物野菜のOAS,ワサビによるアナフィラキシーを合併した症例を経験した.

どちらの症例も化粧品中の食物タンパク成分により経皮感作された可能性が示唆された.発症機序の考察を含めて報告する.

第23回日本アレルギー学会春季臨床大会 2011年5月開催