・シンポジウム18
新しいアレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010(JAGL2010)のポイント
座長:西間三馨1), 今野昭義2)(国立病院機構福岡病院名誉院長1), 脳神経疾患研究所附属総合南東北病院アレルギー・頭頚部センター2))
S18-6.食物アレルギー
宇理須厚雄
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科
--------------------------------------------------------------------------------
アレルギー疾患診断・治療ガイドライン(JAGL)2007から3年たちJAGL2010が発刊された.
この間,食物アレルギーの診療や社会的対応とそれを支える研究成果において多くの進展があった.
原因食品の同定方法として経口負荷試験が日常診療で行われるようになった.
これには,健康保険適応が平成18年(2006年)に外来,平成20年(2008年)に入院での経口負荷試験が認可されたことが大きな影響を与えている.
平成21年(2009年)に食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009(日本小児アレルギー学会)が発刊され,安全性と正確性に関して一定基準を満たした経口負荷試験の普及を推進した.
また,経口負荷試験がもたらした診療への最も大きな影響は必要最小限の除去食を可能とした点である.
血中抗原特異的IgE抗体や皮膚プリック試験に基づいた原因食品の診断には偽陽性・偽陰性が多いため,検査精度に限界が指摘された.
一方,経口負荷試験は最も信頼される検査と位置付けられているが,アナフィラキシーのようなリスクを伴う検査であるため,正確性だけではなく安全性も確保した方法で行うことの重要性が示された.
経口負荷試験によって正確に原因食品が診断された血清の入手が可能となり,血中抗原特異的IgE抗体測定や好塩基球ヒスタミン遊離試験の臨床的意義を検討できるようになった.
特に,前者では,症状出現のプロバビリティ(確率)を示すことが示され,結果の判断方法が明らかとなった.
また,鶏卵アレルギーにおけるオボムコイド,小麦依存性運動誘発アナフィラキシーや小麦アレルギーにおけるomega-5など臨床的意義が明らかなコンポーネントが発見された.
最近,食物アレルギーに対して抗原特異的経口免疫療法を試みる施設が増えてきた.除去食療法が消極的治療法であるのに対して,この免疫療法は食物アレルギーの寛解が期待できる積極的治療法といえる.
経口免疫療法の有効性に関しては多くの論文が発表されており,ほぼ認知されたといえるが,まだ,安全性や獲得した耐性の持続性に関しては課題が残されている.
現時点では,アナフィラキシー対応ができる施設で,食物アレルギーに精通した医師のもとで行われるべきと位置づけられている.
第23回日本アレルギー学会春季臨床大会 2011年5月開催