・シンポジウム9
アレルギー疾患に用いられる薬物療法のトピックス
座長:岡本美孝1), 中澤一純2)(千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学1), 長野赤十字病院薬剤部2))
S9-5.小児喘息・食物アレルギーの薬物療法のトピックス
大嶋勇成
福井大学医学部病態制御医学講座小児科
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小児喘息の病態は,成人と同様に気道の慢性炎症と理解され,その治療は抗炎症作用を持つステロイド薬やロイコトリエン拮抗薬が主体なる.
しかし,これらの薬剤による抗炎症治療により気道リモデリングの進行阻止・改善が可能なのかは未だ不明であり,小児喘息の自然歴を変え治癒に導けるだけの治療法は確立されていない.
そのため,現時点では喘息の良好なコントロールを目指して長期管理を行うことになる.
長期管理の基本薬である吸入ステロイドとしては,ブデソナイド懸濁液が6カ月以上の全ての年齢で適応となり,1日1回投与が基本のpMDI製剤であるシクレソニドが小児適応となり,製剤の選択幅が拡がった.
その半面,吸入ステロイドの効果を最大限に引き出す上で,吸入方法や吸入回数,粒子系など各製剤の特徴に加え,患児の年齢や吸入手技,アドヒアランスなどを考慮した上での製剤の選択と吸入指導がより重要といえる.
食物アレルギーの治療原則は原因食物の除去であるため,原因食物の除去が困難な状況での症状発現予防のための除去食の補助としての薬物療法と,誤食時に出現した症状への薬物療法が行われることになる.
近年,食物アレルギーの寛解誘導のため原因食物を少量ずつ漸増摂取する経口免疫療法が注目されており,食物除去も完全除去ではなく摂取可能なものは積極的に摂取させるようになってきていることから,軽微なアレルギー症状に対する対応とその予防としての薬物療法も重要と考えられる.
食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎や,食物依存性運動誘発アナフィラキシーの一部の症例に対しては,DSCGが有効との報告もあるが,食物アレルギーの症状としては掻痒感のある皮膚症状を伴うことが多いことからヒスタミンH1受容体拮抗薬が薬剤として選択されることが多い.
ヒスタミンH1受容体拮抗薬は中枢神経系への移行性を軽減したものが次々開発され,小児適応のあるものが増加してきている.
しかし,食物アレルギーの多くを占める低年齢にまで適応がとれているわけではなく,薬剤の選択には注意が必要である.
第23回日本アレルギー学会春季臨床大会 2011年5月開催