・シンポジウム11
食物アレルギーをめぐる新たな進展
司会者:河野陽一1), 宇理須厚雄2)(千葉大学医学部小児病態学1), 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科2))
S11-4.経口免疫療法の今後の方向性
柘植郁哉1), 田中健一1), 野村孝泰1,5), 犬尾千聡1), 湯川牧子1), 高松伸枝1), 近藤康人1), 小倉和郎2), 成瀬徳彦2), 小松原亮2), 平田典子2), 鈴木聖子2), 安藤仁志2), 宇理須厚雄2), 山田一恵3), 小林幸子4), 木村 守4)
藤田保健衛生大学医学部小児科1), 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科2), 山田医院3), キユーピー(株)研究所4), 名古屋市立大学大学院医学研究科小児科5)
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食物アレルギーの特異的免疫療法が試みられ,根治を目指しうる治療法として確立されつつある.当初はアレルギー症状の誘発を避けるために,少量の摂取から慎重に漸増する方法が主体であったが,最近,入院にて短期間に増量する急速免疫療法の際立った有効性が報告されて脚光を浴びている.
しかし,急速免疫療法も高率に副反応が出現するうえに,得られた耐性は一時的な脱感作で,真の寛容とは異なるとの考えが一般的であり,急速免疫療法により経口免疫療法が完成したとは言い難いのが現状である.
安全に,恒久的な真の寛容を導入しうる治療法を目指して,経口免疫療法はさらに改善されなければならないと言えよう.
我々は,こうした現状を踏まえ,鶏卵アレルギーをモデルに,アレルゲン性を低下させた食品を用いることによる,より安全な免疫療法の検討を試み,併せて施行した免疫学的検討の結果を,さらなる免疫療法の改良に生かすべく研究を続けている.
当初,低アレルゲン化卵白含有のクッキーを用いた寛容誘導療法を行い,35例中の20例(57.1%)に加熱卵白の耐性化を得た(プラセボでは12例中2例(17.1%)).現在は,オボムコイド含有量を従来の2倍に増量し,鶏卵のアレルゲン性を低下させると言われる小麦成分を含まない低アレルゲン化鶏卵食品を用いた検討を行っており,2ヵ月間の連続摂取により32例中10例の寛解導入が得られているが,寛解率の改善を目指して摂取期間の延長の効果も検討している.
免疫学的パラメーターの検討からは,卵白特異的IgG4の増加,卵白刺激により誘導されるIFN-γ,IL-4両者の低下,卵白刺激により誘導されるTGF-βの増加,好塩基球活性化試験での反応性の減弱といった傾向を認め,さらに症例を増やして検討している.
今回の発表では,こうした我々の試みを含めた経口免疫療法の国内外の現状を概観し,今後の方向性について考察する.
第60回日本アレルギー学会秋季学術大会 2010年11月開催