・シンポジウム3
食物アレルギーの最近の動向
司会者:海老澤元宏1), 古江増隆2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 九州大学大学院医学研究院皮膚科学2))
S3-3.皮膚科領域における食物アレルギー
猪又直子, 池澤善郎
横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学
--------------------------------------------------------------------------------
食物アレルギーの約80%は蕁麻疹や湿疹などの皮膚症状を伴うため,食物アレルギー患者は皮膚や粘膜症状を主訴に皮膚科に受診する機会が多い.また,皮膚科では小児から成人まで幅広い年代の食物アレルギーに遭遇する.
このような背景を踏まえて皮膚科領域における食物アレルギーの動向を紹介する.
近年,動向が注目される食物アレルギーの一つに,花粉症に関連する植物性食品の口腔アレルギー症候群(OAS)がある.
OASは口腔粘膜を主症状とするIgE介在型アレルギーであり,抗原の消化耐性の程度や摂取量によって,口腔症状に限局するものからアナフィラキシーに発展するものまで重症度に幅がある.
OASは成人に比較的好発しやすく,皮膚テストによる診断が推奨されていることから,皮膚科で診断することがしばしばある.
植物性食品によるOASの多くは,花粉との交叉反応性によって発症すると考えられているが,近年「国民病」とも呼ばれる花粉症の増加に伴い,花粉症に関連するOASの増加が危惧されている.
そこで,本疾患の全国的な発症状況や,6年間に当科で経験したOAS症例の集計を通して明らかになってきた特徴や問題点を挙げる.
たとえば,OASの検査法には,特異的IgE抗体測定,皮膚テスト,経口負荷試験などがあるが,検査結果の判断はそれほど容易ではない.
食物の種類によって,特異的IgE抗体検査や皮膚テストの陽性率は大幅に異なることから,食物の種類ごとに適切な検査を選択する必要がある.
また,検査が陽性となっても,その時点で摂取可能な食物について,どのような食事指導がよいかも課題である.
さらに,花粉症の低年齢化に伴うOASの低年齢化の兆しが懸念される.最近,幼児期にすでに花粉感作が成立し,10歳前後にはバラ科果物をはじめとする多種の植物性食品で口腔症状が誘発される小児例が散見されるようになってきた.
今後,花粉症に関連する植物性食品のOASについて,長期的な予後やQOLを改善するために,どのような治療や対策が必要なのか議論が必要である.
そのほかに,小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーや納豆による遅発性アナフィラキシーなど,皮膚科の視点からみた食物アナフィラキシーの動向にもふれる.
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催