・シンポジウム3
食物アレルギーの最近の動向
司会者:海老澤元宏1), 古江増隆2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 九州大学大学院医学研究院皮膚科学2))
S3-4.食物アレルギーの診断におけるIgE抗体の意義(プロバビリティーカーブの確立)
小俣貴嗣1), 田知本寛1), 海老澤元宏2)
国立病院機構相模原病院小児科1) 国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部2)
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食物アレルギーの診断は問診が非常に重要であり,問診から食物の関与が疑われる場合,各種検査後,最終的には食物負荷試験によってなされている.
しかし不必要な食物負荷試験は患者にとっても有害であり行うべきではない.食物負荷試験の適応を考える上で,前段階の検査としてIgE CAP RAST,skin prick test,ヒスタミン遊離試験等がある.
これら検査を施行することで食物負荷試験の適応を決める手助けとなる.
skin prick test,ヒスタミン遊離試験はその有効性が報告されているが現在のところ,単独ではIgE CAP RASTを凌ぐ検査とは言い難い.
一方,一部の抗原によるIgEを介した反応に関しては,Sampsonらにより食物負荷試験の結果が95%以上の陽性的中率となるCAP RAST値が報告されており,重篤な症状が起こることが予想される場合などは食物負荷試験を実施しない方がよいとされている.
鶏卵,牛乳,ピーナッツ,魚類に関しては負荷試験陽性的中率が95%以上となるIgE CAP RASTを設定することが出来ているが,小麦,大豆に関しては95%以上の陽性的中率を設定することは出来ない.
我々は卵白764例(陽性374例),牛乳861例(陽性215例),小麦437例,大豆422例を対象とし,卵白,牛乳,小麦,大豆IgE CAP RASTが食物アレルギー診断に有用か否かを年齢別に検討を行った.
その結果,小麦,大豆に関しては卵白,牛乳の結果ほど十分な結果を得ることはできなかったが,卵白及び牛乳はIgE CAP RASTが高いほど症状発現の可能性は高くなり,同一抗体価においては年齢が高くなるにつれ症状発現の可能性は低下していたことを明らかにした(J Allergy Clin Immunol 2007;119:1272-74).
諸外国でも過去に年齢別で行っている検討はなく,また日本人としての検討では初めての結果となるこのプロバビリティーカーブの詳細について報告する.本シンポジウムではこの結果を中心に食物アレルギーの診断におけるIgE抗体の意義について考察したい.
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催