・出典:国立病院機構盛岡病院化学物質過敏症外来便り
http://www.moriokahosp.jp/
・国立療養所盛岡病院化学物質過敏症外来便り
2003年月12号(Vol.1 No.9)
光触媒の発見秘話
盛岡病院の化学物質過敏症外来では光触媒の空気清浄機や光触媒効果のある和紙を壁に貼っています。
最近ではデパートで光触媒加工をした本物そっくりの花や観葉植物が売られています。
このように今では光触媒の技術は空気中の臭いや化学物質を分解して空気をきれいにするということで脚光を浴びるようになってきましたが、5,6年前までは実用化されるとは考えられていませんでした。
実は光触媒の原点は1967年に東京大学工学部の藤嶋昭先生(現東京大学名誉教授、神奈川科学技術アカデミー理事長)が発見された『ホンダ・フジシマ効果』です。
大学院生であった藤嶋先生が写真の画像材料の研究をされていて、水の中の半導体に光を当てて反応を調べていましたが、たまたま酸化チタンで試したところ溶けずに泡がでました。
光を当てることで水が分解されて酸素と水素が発生したのです。
植物の光合成に近い状態で、感激して恩師の本多先生と論文を書いたのですが当時の学会からは「理論的にありえない」として全く認められなかったそうです。
しかし国際的に権威のある科学誌「ネイチャー」に論文が発表されたところ、大きな反響を呼ぶことになります。
はじめは太陽で夢の燃料を作ることができると期待されたのですが、効率が悪いということで実用化には至りませんでした。
そんな状況を大きく変えたのが東京大学のトイレでした。
当時のトイレは悪臭がひどかったのですが、藤嶋先生はその汚れを光触媒で分解できないものかと考えたのです。
これをきっかけとして光(紫外線)を当てると表面の有機物を分解する酸化チタンの性質を利用して、筋や汚れ、においを分解する研究が民間企業と共同で行われることになりました。
光触媒はシックハウス対策だけでなく、水、土壌、大気汚染の浄化、ヒートアイランドの緩和などで実用化に向けて研究が続けられています。
医療の分野では抗菌タイルによる手術室の無菌化が実現されています。
さらにはがん細胞を光触媒で分解するというがん治療への応用にも期待が持たれているとのことです。
可能性はまだまだ広がりそうですね。
(資料:2004年1月1日付け朝日新聞)