・出典:国立病院機構盛岡病院化学物質過敏症外来便り
http://www.moriokahosp.jp/
・国立療養所盛岡病院化学物質過敏症外来便り
2003年月8号(Vol.1 No.5)
化学物質過敏症の治療について(1)
化学物質過敏症の治療について、薬での治療では現時点では残念ながらまだ確立したものはありません。
原因を断つこと、すなわち環境を改善して化学物質の濃度を低く抑えることが一番効果的であることはいうまでもありません。
ここで注意しておかなければならないポイントは、起こっている症状が、WHOなどの室内環境基準より高い濃度の化学物質の曝露によるものなのか、それとも基準値よりも低い場合でも化学物質に高度に過敏な状態になっていて、低い濃度の曝露でも症状が起こるようになっているのかという点です。
前者はシックハウス症候群などのように新築やリフォームによりホルムアルデヒドやトルエンなどの濃度が基準値の上限かそれ以上である場合です。
早く気がつけば、症状がこじれないうちに、環境を改善すれば比較的速やかに良くなります。
実際に当院に来られた患者さんで新築した自宅に入居したその日から、頭痛、喉の痛み、咳が出て、数日でめまいや倦怠感が起こり、とうとう夜中に短時間ですが意識消失まで起こってしまいました。
新築入居で起こったこと、実際に臭いがひどかったことなどで、ご自分でシックハウス症候群ではないかと心配されて受診されました。
この方の場合は、工務店でホルムアルデヒド濃度を測定してもらったところ基準値の0.08ppmを上回る0.1~0.2ppmあり、まずご本人と息子さんとで実家に避難し、症状が起こっていなかったご主人が家に残り、家の換気をして、さらに工務店にホルムアルデヒド濃度を下げるためにチタンコーテイングをしてもらったところ2ヶ月位して、新築の家で生活できるようになりました。
もしこの方が、ご自分がシックハウス症候群だということに気がつかずに、いろいろな病院を転々として原因がわからずに長期間たってしまうと、そのうちに今度は低い濃度であっても化学物質に曝露されるたびに症状が起こるようになってしまいます。
そうなると狭義の化学物質過敏症の状態となって、日常生活に様々な支障がでてきます。
次回は化学物質の濃度測定はどうしたらできるのか、化学物質を低下させるためにどうしたら良いのかについてご紹介します。