・治療を地道に続けることで、薬がほとんど必要がない状態にまで症状を安定させることも可能だ。
神奈川県内に住む大学生の男性(22)は生後4か月頃から、アトピー性皮膚炎に悩まされた。
小学2年の頃に症状は治まったが、高校進学後は、秋から冬への季節の変わり目には就寝時に呼吸が苦しくなった。
部活動のテニスの練習中も息が切れ、むせることもあった。
大学受験を控えた高校3年になると、症状がひどくなり、夜に息苦しさで目が覚めることが多くなった。地元の内科診療所の医師は「ぜんそく」と診断し、発作が起きた時に使う気管支拡張薬を処方した。
ぜんそくの治療では、気道の慢性的な炎症を抑え、発作を予防することが重要だ。そのため、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の吸入を継続的に行う。
だが、発作が起きた時の対症療法として気管支拡張薬だけしか処方しない医師が少なくない。
東京アレルギー・喘息(ぜんそく)研究所所長の佐野靖之さんは「ステロイドの吸入を用いた治療が不十分で、その結果、発作を繰り返すと、気道の炎症がどんどん悪化していく」と指摘する。
男性は発作時にだけ気管支拡張薬を飲んでいた。
2009年3月に風邪をひき、近くの診療所でせき止めなどを処方された。
熱は下がったものの、せきが止まらなかった。
体を横たえると苦しく、壁にもたれながら寝る日が続いた。
数日後に国立病院機構相模原病院(相模原市)の呼吸器・アレルギー科の谷口正実さんの診察を受けた。
男性には「ゼイゼイ」と呼吸が乱れる症状があり、谷口さんは風邪をこじらせて細菌性の気管支炎を併発し、持病のぜんそくが重症化したと判断。
抗生剤で気管支炎の治療をしながら、高用量のステロイド吸入薬と気管支拡張薬の配合剤を処方した。
男性は朝と就寝前の1日2回、処方された配合剤を使用。1か月後には呼吸が楽になり、吸入も1日1回に減った。
季節の変わり目などに起きやすかった息苦しさもなくなり、その後はステロイドの吸入薬だけですむようになった。
今年9月に受診した際には、「ほぼ完治に近い。薬をやめても大丈夫」と告げられたが、当面は、体調を見ながら数日おきに低用量の吸入薬を使っている。男性は「これまで発作の苦しさがいつも気になっていた。好きなテニスも思い切りできる」と喜ぶ。
谷口さんは「治療をしないと、ぜんそくは決して良くはならない。ねばり強く続ければ、薬も減らしていける」と話す。
(2011年11月7日 読売新聞)