・一般演題
化学物質過敏症2
座長:長谷川眞紀(国立病院機構相模原病院アレルギー・呼吸器科)
P-287.気道過敏性亢進を有する化学物質過敏症患者に対するステロイド吸入療法の有用性
水城まさみ 山田博之
国立病院機構盛岡病院呼吸器・アレルギー科
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化学物質過敏症(MCS)患者において,咳嗽の有無に関わらず健常者や喘息患者に比して有意に咳感受性亢進が認められることを報告してきた.
一方MCS患者の中に,MCS発症前には喘息と診断されていなかったが化学物質曝露をきっかけに息苦しさや喘鳴を呈するようになった者が認められる.今回これらの患者にメサコリン負荷にてアストグラフ法で気道過敏性検査を実施し,気道過敏性亢進が認められた者に対してステロイド吸入療法(ICS)を導入し,ピークフロー値(PEFR)の推移,QEESIを用いた化学物質不耐性スコア,症状スコアの推移をみて,その効果について検討を加えた.
MCS発症前には喘息と診断されておらず,MCS発症時あるいは発症後に気道過敏性亢進を示した患者は9名(年齢は25歳から59歳で全例女性)で,アトピー素因は1/3に見られた.
大部分の症例で,喘息症状は化学物質曝露が原因で起こり,他の時に発作がみられることは殆どなかった.
ICS投与により有意なPEFRの改善,喘息症状,MCS症状両者の改善が認められた.
以上よりMCSに見られる気道過敏性亢進に対しては積極的にICSを導入することが有用と考えられた.
しかしMCSと気道過敏性亢進の関連性について,単なる合併かMCSの一症状かは未だ明らかではなく今後の検証が求められる.
第20回日本アレルギー学会春季臨床大会 2008年6月開催