・シンポジウム4
薬物アレルギーの発症メカニズムと治療
司会者:猪熊茂子1), 飯島正文2)(東京都立駒込病院アレルギー膠原病科1), 昭和大学医学部皮膚科2))
S4-1.薬剤アレルギーの発症メカニズム
橋爪秀夫
浜松医科大学皮膚科
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薬剤アレルギーの多くが免疫学的機序を介しておこることは,古くから知られているが,その詳細は現在に至っても明らかでない.
我々の教室では,薬疹患者の末梢血から薬剤特異的T細胞を樹立し,薬剤・T細胞・抗原提示細胞の3者がどのように関わっているのかを調べ,薬疹の発症機構を解明しようと試みてきた.
その結果,臨床型分類である中毒性壊死性表皮融解症およびStevens-Johnson症候群(TEN/SJS),紅斑丘疹型薬疹(MPE),急性汎発性膿疱疹(AGEP),薬剤過敏症候群(DIHS)においては,皮疹を形成する薬剤特異的T細胞の特性が異なっていることが判明した.
また,薬剤特異的T細胞に発現するT細胞受容体には,患者のハプロタイプに無関係に薬剤特異的に反応しやすいものが存在することが判明し,スーパー抗原に類似した反応を見出した.
これまで薬剤などの低分子物質が免疫反応を生じるためには,蛋白に結合するハプテン化が,抗原として認識されるための重要なプロセスであるという常識があった.
蛋白と共有結合された薬剤を認識するメカニズムは,薬剤特異的T細胞で認められるが,MHCに対する抗体を用いて薬剤特異的な増殖反応の抑制を調べてみると,我々の樹立した薬剤特異的T細胞の中には,従来の抗原認識機構では説明がつかない多彩な反応が見られた.
これまでの結果から,薬疹におけるT細胞の薬剤抗原認識機構は,いままでに考えられてきた以上に複雑であり,患者においては比較的ブロードにT細胞を刺激しうる可能性がある.
同一薬剤でさえも,患者によっては多彩な臨床型を生じさせるひとつの理由なのかもしれない.
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催