医薬品による血液障害の病態と対応 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・シンポジウム4
薬物アレルギーの発症メカニズムと治療
司会者:猪熊茂子1), 飯島正文2)(東京都立駒込病院アレルギー膠原病科1), 昭和大学医学部皮膚科2))

S4-3.医薬品による血液障害の病態と対応

檀 和夫
日本医科大学医学部血液内科


--------------------------------------------------------------------------------
 医薬品による血液障害には,じつは無顆粒球症,再生不良性貧血,高度の血小板減少症,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および血栓症などの,発見が遅れると致命的ともなり得る重篤な副作用があるという事実について医師全体の注意を喚起し,常に医薬品副作用に対して意識することが重要である.上述の重篤副作用はすべて診断と同時に入院を要し,専門的な治療が不可欠である.

一般的に医薬品による副作用か否かを判断する基準は,「疑われる薬剤」がその副作用を起こす以前に投与され,かつ薬剤の中止により回復をすること,その副作用をきたす他の原因が除外されること,である.

医薬品による血液障害の発症機序に関しては十分に明らかになっているとはいえず,免疫学的機序のみでなく,中毒性機序や特異反応と捉えられているものもある.

本講演では血液障害がほぼ必発である抗腫瘍薬や,専門医しか使用しない医薬品については触れず,一般医師が日常的に使用する可能性のある医薬品について述べる.

無顆粒球症は抗甲状腺薬,塩酸チクロピジン,サラゾスルファピリジンなど多くの医薬品が原因となり,顆粒球がほぼ0となり感染症を引き起こすため直ちに医薬品を中止し,感染症に対する適切な治療を開始しないと致死的となり得る.

再生不良性貧血の原因医薬品は抗リウマチ薬,H2阻害薬,NSAIDsなどの報告が多く,輸血や感染症の治療などの支持療法を要する.

血小板減少症に関しては,特に経過中急激に血小板減少が出現した場合にはまず薬剤性を疑うことが大切である.

高度の血小板減少症では副腎皮質ステロイド薬の大量投与が行われる場合がある.

TTPを引き起こす医薬品として最も重要で注意すべきものは塩酸チクロピジンであり,投与中の定期的血液検査の施行と診断後直ちに開始する血漿交換療法が重要である.

その他講演では血栓症や各種貧血についてもふれてみたい.

医薬品を投与するにあたって大事なことは,

1)その医薬品の重大な副作用を熟知しておくこと,

2)副作用は出るものと考えて慎重な観察をすること,

3)重大な副作用については患者に説明をしておくこと,である.

第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催