医薬品副作用被害の現状と対応 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム1
薬物アレルギーの現状と対策
司会者:塩原哲夫1), 森田 寛2), 伊藤節子3)(1)杏林大学医学部皮膚科, 2)お茶の水女子大学保健管理センター, 3)同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科臨床栄養学)

5.医薬品副作用被害の現状と対応

南光弘子
東京厚生年金病院皮膚科


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 本邦における医薬品副作用の被害状況は「医薬品副作用被害救済制度」の業務概要がよくそれを反映している.

1980年に創設されて本年5月で28年目を迎えるこの制度は適正な医療を受けたにもかかわらず重篤な副作用を被った被害者に対する社会的救済制度であり,他国では類をみない公的制度である.

厚生労働大臣から諮問を受けた薬事・食品衛生審議会の副作用判定委員会が申請事例についての判定業務を行っている.

創設初年度は22件の申請件数であったが,ここ10年は右肩上がりに上昇し,2002年度以降の請求件数は年間500件を超え,2005年度までの総数は8000件近くに上り,およそ9割が副作用と認定され支給されてきた. 

過去26年間の救済制度で副作用と認定された7274件中,最も多いのが全体のおよそ2割を占める皮膚附属器官障害(21.1%)である.

第2位がショック,アナフィラキシーショック,悪性高熱などの一般的全身性障害(17.8%),第3位が低酸素脳症,無菌性髄膜炎などの中枢・末梢神経系障害(14.9%),第4位に肝臓胆管系障害(14.5%)が続き,この4つで7割近く(68.4%)を占め,本邦における四大有害薬物反応といえる.

原因薬と推定された医薬品の第1位は中枢神経系用剤で,およそ三分の一を占めていた.

これには非ステロイド抗炎症薬や抗けいれん薬など多様な薬剤が含まれている.

第2位は抗生物質製剤(化学療法剤の抗菌薬を除く),第3位はホルモン剤であった.すなわち中枢神経系用剤と抗生物質製剤の2つで被疑医薬品全体の半数を占めていた.以上のことは年次別でもほぼ同様であった. 

これらの医薬品副作用被害に対し,国は,死亡した場合や入院相当の医療を受けた者,あるいは日常生活が著しく制限されるような高度な障害(1級,2級相当)が生じた場合を対象に救済給付を行ってきた.

救済給付の種類は7種あり,請求期限などが規定されている.

障害年金では急性期を過ぎて一定期間後に固定した障害に対し救済給付されている.

皮膚科領域と関連する例ではStevens-Johnson症候群と中毒性表皮壊死症による眼合併症が挙げられる.

失明ないし両眼視力合わせて0.04以下が1級障害相当,0.08以下では2級相当の認定基準が設けられている.

死亡の場合の遺族年金は遺族の最優先順位の人を対象に10年間を限度として支給されてきた. 

今回,他国に誇れる救済制度の理解を深めることを目的に,臨床医が念頭におくと役立つ知識を中心に概説したい.

第19回日本アレルギー学会春季臨床大会 2007年6月開催