・シンポジウム1
薬物アレルギーの現状と対策
司会者:塩原哲夫1), 森田 寛2), 伊藤節子3)(1)杏林大学医学部皮膚科, 2)お茶の水女子大学保健管理センター, 3)同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科臨床栄養学)
3.薬剤性過敏症症候群の現状と対策
藤山幹子
愛媛大学大学院医学系研究科感覚皮膚医学
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薬剤性過敏症症候群(DIHS)は,発熱と多臓器障害を伴う薬疹であり,HHV-6の再活性化を伴うことを特徴とする.
DIHSの概念が広く認識されるようになり,報告数も増加している.
しかし報告される症例は一部にすぎないため,実際はかなりの発症があるのではないかと考えられる.
診断基準が提唱され,DIHSを認識した上で治療が行われるようになった現在でも,死亡例が存在する.
DIHSの発症を予防する対策について,DIHSの治療について述べてみたい.(1)DIHSの発症予防DIHSの原因薬剤は限られている.
そのため,発熱を伴う発疹を診た場合にDIHSの原因薬剤の内服歴があれば早期に中止することが,DIHSの発症抑制につながるかもしれない.
つまり,DIHSの病態の形成には,薬剤に対する強い免疫反応が必要と考えられ,原因薬剤の投与が中止されれば,その後のDIHSへの進展を抑制する可能性がある.
また,DIHSを発症する可能性のある個体に投与しないという発症予防もありうる.
たとえばミノサイクリンによるDIHSは欧米に比べ日本では少なく,人種差があることが示唆されている.
近年,アロプリノールによる重症薬疹では一定のHLAが検出されることが報告されており,国内でも検討が進められている.
今後,薬剤投与の是非をあらかじめ検査するようなことができるようになるかもしれない.
(2)DIHSの治療DIHSの概念が明らかになった比較的早期より,HHV-6の再活性化が生じる頃のステロイドの急激な減量は,HHV-6の再活性化による病態の再燃を増強する可能性があるという考え方から,ステロイドの減量はゆっくりと行うことが主流となっている.
その結果,比較的多量のステロイドが長期にわたり投与される傾向になっている.
DIHSでは,サイトメガロウイルス感染を生じることがあるが,これはDIHSそのものの病態の一部なのか,治療による免疫抑制によるものなのか,現時点では不明である.
しかし,サイトメガロウイルス感染症と同じ頃より,細菌感染症やカリニ肺炎などの合併が多く認められる.
これらDIHSの易感染性が,このような治療方針で治療する以前と比べて増加しているかどうかははっきりしないが,DIHSの死亡の原因として敗血症は重要な問題である.
DIHSの免疫状態の解明と,それにもとづく治療方針の検討が必要である.
第19回日本アレルギー学会春季臨床大会 2007年6月開催