・シンポジウム1
薬物アレルギーの現状と対策
司会者:塩原哲夫1), 森田 寛2), 伊藤節子3)(1)杏林大学医学部皮膚科, 2)お茶の水女子大学保健管理センター, 3)同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科臨床栄養学)
1.アナフィラキシー反応の現状と対策―抗生剤,造影剤を中心として
山口正雄
東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科
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薬物により惹起されるアナフィラキシー反応は,有害薬物反応(adverse drug reaction)のうちでも,投与後最も速やかに生じる反応である.
全身諸臓器に影響が及ぶが,特に心血管系および呼吸器系の症状は生命の危険に直結することから,臨床上大変に重要である.
従来からの命名法に則ると,発症機序に基づき,IgE抗体が関与するI型アレルギーの典型例としてのアナフィラキシー反応と,IgE抗体を介さないアナフィラキシー様反応(代表例は造影剤)に大別される.
両者は臨床症状からは区別できないが,原因薬に対するIgE抗体が認められる場合,およびペニシリンなど既にアナフィラキシーの原因薬物として周知の場合は「様」を付けずにアナフィラキシー反応と診断する.
アナフィラキシー反応・アナフィラキシー様反応の両者を念頭に置きつつ最近の副作用報告を見ると,従来と同様に抗生剤と造影剤は特に重要な原因薬と考えられるので,現状を概括し,対策を論じたい.
重要な点として,問診によるアレルギー既往の確認は当然重要であること,注射用抗生剤において皮膚反応試験は添付文書内では現在触れられていないが,アレルギー既往に基づき皮膚反応試験が推奨される場面があることは十分に周知されてはおらず,注意を喚起しておきたい.
診断に関しては,欧米の流れとして,発症現場ではIgE依存性か否かに拘らず速やかに診断して治療を開始する方向に動きつつあると考えられる.
確定診断のための検査および患者指導がアレルギーを専門とする医師に委ねられる場面が今後増加するであろう.
アナフィラキシーを発症した後の原因薬特定の手段として,即時型皮膚反応は従来同様に有用であること,高濃度薬液の皮内反応を不用意に行うのは危険があること,in vitro検査は一部の薬物に限定されており小分子薬物の多くは検査が困難であることはよく知っておく必要がある.
発表の中では,我々が近年経験したアナフィラキシー症例に対して複数の被疑薬からどのように原因薬を絞り込み検査を進めたかも触れておきたい.
第19回日本アレルギー学会春季臨床大会 2007年6月開催