シックハウス症候群と免疫応答 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム14
環境化学物質とアレルギー
司会者:藤枝重治1), 高橋一夫2)(福井大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科1), 横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学2))

S14-3.シックハウス症候群と免疫応答

坂部 貢
北里大学薬学部公衆衛生学


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 シックハウス症候群は,特定の居住環境における化学的因子(室内空気汚染)あるいは生物学的因子(アレルゲン等)を原因として生じる環境起因性健康障害の総称である.

ここ数年来,厚生労働省,環境省,国土交通省ならびに文部科学省をはじめとする公的研究費の増大と産官学の円滑な協力のもと,学際的に研究が展開され,それぞれの専門領域で大きな成果が挙げられている.

またシックハウス症候群の疾患概念の確立および病態解明・診断・治療法に関する国際シンポジウムの開催等,国際研究交流も盛んになり,その研究成果には一定の評価が与えられている.

そこで本シンポジウムでは,揮発性有機化合物によるシックハウス症候群と免疫応答に注目し,我々のグループの最近の研究成果を中心として,これまでに国内外で報告された医学的知見を整理,病態解明に向けた現段階での研究動向を提示したい.
 シックハウス症候群において共通して変動する遺伝子群をマイクロアレイ解析した.健常者では変動せず,患者群の半数以上に共通して変動する遺伝子をリストアップしたところ28遺伝子が見出された.

これらの遺伝子には,IL-1β,IL-8,TNF-α,CCL3,CCL4,CXCL2などのサイトカインやケモカインが含まれていた.

この28遺伝子をクラスタリング解析し,縦方向は28遺伝子の発現変動状況について「似たパターンを示す被験者」,横方向は28遺伝子の中で発現変動状況が「似たパターンを示す遺伝子」をそれぞれクラスター形成させた.

その結果,患者群を高変動群と低変動群に分割可能であることがわかり,病勢の強さを反映しているものと思われた.

さらに,患者高変動群と同じく遺伝子発現が高変動する健常者群において比較したところ,患者群で変動する一方,健常者群で変動しない10遺伝子が抽出され,それらは同一のクラスターに属することがわかった.

28遺伝子の中でも,この10遺伝子が患者に特異性の高い遺伝子群である可能性が考えられた.
 事実,本症ではアレルギー疾患など免疫応答の関与する疾患の併発や既往の多いことが知られており,これらの遺伝子群が,病態と深く関連する可能性が示唆された.

第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催