シックハウス症候群の疾患感受性遺伝子の探索 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム7
化学物質過敏症の実態と対策
司会者:中村陽一1), 坂部 貢2), 鳥居新平3)(1)横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター, 2)北里大学薬学部公衆衛生学, 3)名古屋大学医療技術短期大学部)

2.シックハウス症候群の疾患感受性遺伝子の探索

木村 穣
東海大学大学院先端医科学


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 本題ではシックハウス症候群を例に,疾患感受性遺伝子へのアプローチを述べたい.

まず,本疾患の感受性遺伝子としてNTE(neuropathy target esterase)遺伝子を候補遺伝子として,NTE遺伝子の3'flanking領域に存在するATTのマイクロサテライト繰返し配列のタイピングを行った.

日本対照群151人とシックハウス症候群患者59人の解析の結果,7個の対立遺伝子が判明し,2個の対立遺伝子は患者集団において高頻度に見いだされた.

これら2個の対立遺伝子頻度に関する有意差検定に対し,Bonferroniの補正を行った結果,1個の対立遺伝子において統計学的有意差が得られた(Pc=0.040).

次いで,患者集団において特異的な対立遺伝子を遺伝子内に求めた.

患者集団および健常者集団を用いた相関解析の結果,エクソン2内の非翻訳領域に存在する遺伝マーカー(rs604959)において,統計学的に有意な対立遺伝子頻度の差があった(P=0.037).

同様に,遺伝子型頻度についても有意差検定を行った結果,プロモーター領域(rs560849),イントロン1領域(rs540516)においても統計学的有意差を示す遺伝子型が見出され,補正の結果,rs604959においてのみ,統計学的有意差が得られた(P=0.019).

この遺伝学的相関解析に使用した53個の遺伝マーカー間の連鎖不平衡値D'を算出し,D'値が0.94以上のハプロタイプを推定した.

その結果,53個の遺伝マーカーは9個のハプロタイプブロックに分けられ,ハプロタイプブロック1および3において,統計学有意差があり,前者においては,上記rs540516およびrs604959が含まれていた.

さらにプロモーター領域(rs560849)遺伝マーカーを加えた3個の遺伝マーカーのうち,2個ずつの遺伝マーカーについてハプロタイプ推定を行った結果,イントロン1(rs540516)およびエクソン2(rs604959)における2個の遺伝マーカーについて3個のハプロタイプ(TA,TC,CC)中CCにおいて,患者群および健常者群での統計学的有意差が見られた(P=0.000003).酵素解析の結果とともに,シックハウス症候群を例とした関連疾患への感受性遺伝子探索の道を議論したい.

第19回日本アレルギー学会春季臨床大会 2007年6月開催