負荷テストの現状と問題点 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム7
シックハウス症候群の現状と展望
座長:鳥居新平1),長谷川眞紀2)(1)愛知学泉大学,2)(独)国立病院機構相模原病院アレルギー・呼吸器科)

3.負荷テストの現状と問題点

木村五郎
(独)国立病院機構 南岡山医療センター アレルギー科


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 シックハウス症候群の診断には,詳細な病歴と症状の聴取,身体所見の確認,他疾患の除外が必要であり,また可能であれば,室内気中の有機化合物の測定も必要となる.

しかし,シックハウス症候群は,原因となる同一の室内環境にいる人の一部にしか発症せず,その機序は,いまだに明らかでない.

当科では,シックハウス症候群の診断の一助とするため,同意の得られた方に,室内気中の揮発性有機化合物として問題になるホルムアルデヒド,トルエン,キシレンについて,負荷テストを行っている.

方法は,活性炭の吸着塔により,揮発性有機化合物をできるだけ除去したテストブースを用い,前記のそれぞれの気体を室内気濃度指針値の二分の一以下の濃度となるようにし,15分間入室して自他覚症状の変化を記録する.

また対照として気体を注入しない場合も同様に症状を記録する.

テスト濃度については,客観性を高めるため,原則としてブラインドとしている.室内気濃度指針値は,大部分の人が一生居住しても健康障害をきたさないと考えられる濃度として策定されているが,シックハウス症候群の患者の一部では,負荷テストを行うと,特定の気体に対して指針値の半分以下の濃度でも頭痛,気分不良,眼痛,咳,息苦しさなどの症状を呈する場合があることが明らかとなった.

この結果は,指針値以下の室内環境でも過敏に反応する患者があることを示しており,シックハウス症候群患者の一部には,環境指針値が守られていても,発症する人がいることを示している.

負荷テストは,陽性であれば,原因物質の推定に有用であり,また患者の反応閾値を推定することができる.

自分が何に反応し,どの程度の濃度に反応するかを知りたいと希望する患者もあり,そのような場合に負荷テストはよい適応になる.

しかし,あくまで誘発テストであり,症状の落ち着いている人が対象となり,事前に予想される症状などを十分インフォームしておく必要がある.

負荷テストの問題点として,まず,原因物質は,実際は多種にわたると考えられ,すべてについて負荷テストで検討することは困難な点である.

また,テストの評価の指標は,現在のところ自覚症状が中心であり,判定が困難な症例も認められる.

負荷テストは,今後もシックハウス症候群の診断や病態解明に寄与すると考えられるが,そのためには,これらの問題点の解決が必要となる.

第17回日本アレルギー学会春季臨床大会 2005年6月開催