・シンポジウム1
化学物質過敏症
司会者:石川 哲1),西岡 清2)(北里研究所病院臨床環境医学センター1),東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科環境皮膚免疫学2))
2.化学物質過敏症の鑑別診断
鳥居 新平
愛知学泉大学家政学部
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化学物質過敏症に関しては1987年Cullenらによりまとめられた概念が一般に用いられている.
症状は多彩であり,局所刺激症状から全身症状に至るまでさまざまであり,全身症状としては自律神経症状,精神神経症状を思わせる不定愁訴である.
本症では環境中の極めて微量な化学物質にも過敏症状を呈し,多種の化学物質に反応し,これら物質の複合的な刺激作用あるいは毒性が病態に関係していることが多く,その化学物質は環境中の空気汚染物質としてばかりでなく,食品中の化学物質(食品添加物,食品構成成分として)まで含まれており,症状との因果関係を把握することは難しい場合が多い.
鑑別すべきものにはシックハウス症候群,慢性疲労症候群,fibrimyalgiaなどが挙げられているが,これらの症候群の診断基準も必ずしもコンセンサスが得られたものではない.
これらの中でもシックハウス症候群では問題のある住宅に住んでいる人の多くが健康被害を訴え,環境を変えることにより愁訴も軽減したり,消失することも多く,さらに原因も室内汚染物質に限定されるので,その診断も比較的容易であることが多い.
慢性疲労症候群やfibrimyalgiaなどの原因も明らかではなく,器質的病変もみられないばかりでなく,症状も化学物質過敏症と類似しているので,症状からの鑑別は困難である.
化学物質過敏症の診断の決め手は除去・誘発試験であり,そのためには化学物質が極めて少ない環境が必要であり,施設も限られてくる.
以上のような化学物質過敏症の鑑別診断の問題点を提起し,討論の試料としたい.
第52回日本アレルギー学会総会 2002年11月開催