・シンポジウム1
化学物質過敏症
司会者:石川 哲1),西岡 清2)(北里研究所病院臨床環境医学センター1),東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科環境皮膚免疫学2))
1.化学物質過敏症の診断および検査所見
宮田 幹夫
北里研究所病院臨床環境医学センター
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米国臨床環境医学会は1999年に化学物質過敏症の特徴を以下のようにまとめている.
(1)症状は化学物質曝露により再現する.
(2)慢性の経過をたどる.
(3)非常に微量な化学物質に反応を示す.
(4)原因物質の除去で症状は改善または軽快する.
(5)化学構造的に無関係な多種類の化学物質に反応する.
(6)多種類の器官にまたがり症状が出現する.症状のうちで,頭痛,筋肉痛,関節痛,疲労,うつ,興奮しやすい,睡眠障害,集中力の低下,記憶力低下,注意散漫,微熱,咽頭痛,嗅覚過敏,眼のかすみ,発汗異常,手足の冷え,めまい,のど・鼻の痛み,乾き感,気道の閉塞感,かぜをひきやすい,下痢時に便秘,悪心,鼻血,心悸亢進,不整脈の感じ,胸部痛,皮下出血,生理不順,頻尿,排尿困難などが主な症状である.
微量な化学物質に反応を示して症状の悪化を示すが,その中でも空気汚染物質に敏感に反応を示すことが多い.
診断にもっとも重要なのは問診である.
化学物質の総負荷量と暴露期間が,発症に大いに関係するために,化学物質に関する詳細な問診が必要である.
しかし化学物質過敏症が身体的疾患であることを証明するためには,客観的異常所見を検出する必要があり,現在以下のような臨床検査で異常検査所見が得られている.
・眼球追従運動・瞳孔の対光反応の異常・視覚感度の低下・調節機能の異常・呼吸機能異常.これと同時に,微量化学物質負荷試験により生じる症状,および検査所見の変動を確認することも診断を確実にするものである.
心身ともに不安定な状態にある患者は微量化学物質負荷により,種々な変動を示している.このように,患者の自覚症状,検査所見を含めて総合的に診断を下すこととなるが,各科の協力を得て,他の身体疾患を除外していくことも重要である.
検査所見を含めた本邦の化学物質過敏症診断基準の詳細は日本医事新報(石川哲他:化学物質過敏症の診断基準について 日本医事新報3857号28ページ,1998年)に記載されているので参照されたい.
第52回日本アレルギー学会総会 2002年11月開催