・ 私の指摘の正しさは、98年4月に発表された国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の報告書(邦訳が4月7日の東京で開催された国際シンポジウムで配布された)に「0.2μTのカットオフポイントで、アンマッチドとマッチド分析で、それぞれ1.2と1.5の相対リスクが得られた。
0.3μTのカットオフポイントで・・・アンマッチドの相対リスクは1.7であった。・・・磁界と白血病リスクの間のポジティブな関連性に示唆的な結果である」とリネット論文の事が紹介されていることからも明らかだ。
ICNIRPの疫学分野の責任者はカロリンスカ研究所(スウェーデン)のアールボム博士であり、邦訳の責任者が委員でもある多気教授なのである。4月7日のシンポジウムに邦訳を印刷配布したのであるから、3月中には原論文の内容を少なくとも多気教授は知っていたはずである。
このリネット論文のことは、日本のマスコミ、例えば「週間文春(97年7月31日号)」で、「電磁波とガンは無関係」との見出しで特集されたし、朝日新聞(7月22日号)では「磁場‘推定無罪’」と報じられ、「磁界測定値(≧0.2μT)」の場合のアンマッチド分析結果のみが報道され、「磁界測定値(≧0.3μT)」の場合や「磁界測定値(0.4~0.499μT)」の場合のRRは紹介されず、それどころか「磁場が大きい方が患者数はやや多かったが、統計的に意味のある差はなかったという」とまで書いている。
これらのマスコミに対する批判は、「噂の真相(97年11月号)」にジャーナリストの平澤正夫さんが詳しく書かれているので、それを参照して欲しい。
また、ミカエリス論文についても「学会報告書」と「私のリスト」では大きな相違がある。「磁界測定値(≧0.2μT)」のRR値は同じだが、私の方には11.1倍もの大きな数値が掲載されているからだ。
この値は4才児以下の幼児については、このような異常に大きな値が得られた事が本文中に書かれているので、私はそれを「重要な代表値」だと判断して紹介しているわけだ。
一方、「学会報告書」ではその数値のことはどこにも書かれてはいないのである。
多くの委員はそれを「無視した」のが、「論文を読まなかった」のかのどちらかなのであろう。
いずれにしろ、今回の「学会報告書」の疫学研究の評価では、ここに述べたような「電磁波の危険性」を過小評価をしようとの意図的な評価箇所が多すぎるのである。
[以上]