熱効果については本稿では概要を述べるにとどめるが、頭蓋骨は、前頭部、中頭部、後頭部に腔を持つ複雑な幾何学的構成になっているため、多様な電波の重複や反響が起こりうるということを指摘しておく。
そのため、高性能のケータイで頻繁に通話すると、耳の後ろのアンテナが脳に極めて近い位置にあるため、神経網が局所的に過熱されて、いわゆる「ホットスポット」が脳内に生じる恐れがある。
さらに、水晶体やレンズがある眼球が過熱されることも大きな問題である。
目には熱を調節する機能が無いことがすでに知られている。
つまり、加えられた熱を逃がすことができない。
そうしたことから、ケータイによるマイクロ波の被曝が原因で小児にも白内障が起こることが指摘されている(ケルン環境研究所)。
我々は、技術の進歩の成果に対して盲目になっているのだろうか?
高周波による身体への害についての理解を高めるために、生物理学的な原理についていくつか述べる。
生の営みは、細胞膜における放電と蓄電に結びついていることが知られている。
細胞膜では、いわゆる「イオンポンプ」がナトリウムイオンを細胞から排出し、カルシウムイオンを細胞内に取り込む。
それによって細胞の電気的環境が保たれており、共鳴振動数の高いギガヘルツ帯、つまりマイクロ波の微弱な電磁場の電磁振動が発生している(H・フレーリヒ論文)。1991年のノーベル医学賞が細胞膜組織におけるイオン媒路の発見に授与されているのは興味深い。
それには、情報の伝達には0.001mW/cm2の微弱な電磁場強度でも十分で内分泌の誤作動(分泌物の生産過多や過少)を引き起こすことが示されている。これとの関連で、ケータイ使用者の頭部への影響は1mW/cm2以上で現れる。
ドイツの物理学者アルベルト・ポップは、細胞が微弱な「生光子の放出」と関連することを証明できた。
これは最小のエネルギー粒子で、その一つ一つが細胞核のDNAの螺旋状組織の中にある。
この光子は、整流された光の振動であるとの特性を持つ。
したがって、細胞は微弱なレーザー光線との関係を持っている。
よって、マイクロ波による細胞への非熱性の生物学的刺激は、一方では細胞膜の機能の攪乱となって現れる。
さらに、「生光子との関係」の阻害によっても生じる。特に、生光子がマイクロ波によって整流性、つまりレーザー光線の特性を阻まれることが挙げられる。DNAの伝達におけるこの秩序の喪失は、生体の情報システムに破壊的な結果を招きうる。
遺伝子は、遺伝子操作技術のようにそれ自身の構造が変わってしまうことはないが、内包する情報が封鎖される。
たとえば腫瘍抑制遺伝子が機能しなくなってガン細胞が急に妨害されることなく増殖することは容易に想像がつく。
高周波による被害のやっかいなところは、我々の生体の細胞、神経系、情報伝達システムそのものが微弱な強度によっても反応してしまうところにある。
外部の人工技術による高周波の発生源の過剰によって、高周波エネルギーとが細胞の情報システムに干渉し、細胞、神経、体液のレベルで様々な変調が引き起こされると理解できる。