・ミニシンポジウム32
アレルゲン・抗原と症例1
座長:岸川禮子1), 榎本雅夫2), 秀 道広3)(国立病院機講福岡病院臨床研究部内科1), NPO日本健康増進支援機構2), 広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学3))
MS32-7.乳幼児期からの頻回の農薬曝露が誘因と考えられPVO2が指標となった化学物質過敏症の1例
水城まさみ 山田博之
国立病院機構盛岡病院呼吸器・アレルギー科
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化学物質過敏症(MCS)発症の原因となる化学物質は多岐にわたるが,最近農薬や除草剤の曝露で症状が増悪する症例が増えてきている.
症例は35歳の男性.
実家がリンゴ農家で周囲も農家が多い.乳児期に母親が農薬散布により急性症状が起こったエピソードがあり,同時期に本人が原因不明の下痢を起こした既往がある.
子供の頃から病弱で視力低下があった.
20歳過ぎより倦怠感,不眠,昼夜逆転の症状がひどくなっていたが,本人が自分で情報収集しMCSではないかと疑い北里研究所臨床環境医学センターを受診し,MCSと診断された.
眼症状については,有機リン中毒に起因する可能性が高いと診断された.
H17年12月に前医より当院MCS外来を紹介受診.QEESIでは「MCSである可能性が非常に高い」に分類され,PVO2が60Torrと高値だった.
タチオン,ビタミンB12の内服にて経過をみていたが,農薬散布時期に一致して症状が増悪した.
PVO2は症状の消長に強く相関した.
経過中PAMの投与なども施行したが,症状の増悪を繰り返し通常の日常生活が不能となったため環境からの回避を目的に入院治療となった.
一時はタチオンやグリチルリチン点滴を継続し,症状が軽減.
積極的に運動療法を行なったところ症状はさら好転しPVO2が正常化している.
第59回日本アレルギー学会秋季学術大会 2009年10月開催