・② 行政的対応
国民が、睡眠、食事、団欒などで疲労を回復し、健康保持を行う場である住宅で、室内環境要因による健康障害が発生することは、予防すべきことであり、シックハウス症候群の発生は社会の重要な問題として取り上げられた。
国土交通省と厚生労働省が中心となり、対策が平成9年頃から策定されており、改善の兆しが見られることは幸いである。
厚生労働省が室内空気中に存在する13種類の化学物質濃度指針値を平成9年から14年に策定し、ホルムアルデヒドを使用する職域における指針値を提示した。
また厚生科学研究費補助金によるシックハウス症候群に関する研究も現在に至るまで行われている。
さらに平成20年にシックハウス症候群のため室内環境改善をする間に公営住宅利用を可能にするガイドラインを発した。
国土交通省は、建材から発生するフェノブカルブとホルムアルデヒドの規制、室内換気装置の設置を行うため、建築基準法等を改正した。
下記にその概要を述べる。
Ⅰ.室内環境対策
(1) 室内空気中化学物質濃度の指針値等について
平成9年から室内空気中化学物質濃度の指針値が公表されてきたが、室内空気汚染に係るガイドラインとして、平成14年に新たにアセトアルデヒド及びフェノブカルブの室内濃度指針値に係る検討結果がとりまとめられ、合計13物質の指針値と総揮発性有機化合物量(TVOC)に対する暫定値が提示された(1)。
室内空気中に存在する化学物質は全て多かれ少なかれヒトに何らかの影響を及ぼす可能性があるため、公衆衛生の観点から化学物質の不必要な暴露を低減させるため、個別物質について対策の基準となる客観的な評価を行った。
ここで示された指針値は、現時点で入手可能な毒性に係る科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を算出したものであり、その設定の趣旨はこの値までは良いとするのではなく、指針値以下がより望ましいということである。
なお指針値は、今後集積される新たな知見や、それらに基づく国際的な評価作業の進捗に伴い、将来必要があれば変更され得るものである。
指針値の適用範囲については、特殊な発生源がない限り全ての室内空間が対象となる。
指針値設定はその物質が「いかなる条件においてもヒトに有害な影響を与える」ことを意味するのではない。
客観的な評価に基づく室内濃度指針値を定めることは、化学物質が健康影響の危惧を起こすことがないように安全かつ適正に使用され、化学物質が本来もっている有益性が最大限生かされることに大きく貢献すると思われる。