SHS診療マニュアル第3部6 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・Ⅲ診断書の対応
1)はじめに
本研究班におけるシックハウス症候群(sick house syndrome:SHS)は従来の巾広い定義に比してかなり絞り込んだ定義となっており、診断基準(1)の③参照)に合致しない場合は除くことになっている。
したがって、この診断基準を厳格に守れば診断書を書くのは容易である。

得られた事実をそのままに書くことにより、「シックハウス症候群」、「シックハウス症候群(疑い)」、「その他(心身症、うつ病、自律神経失調症、パニック症候群など)」と診断名が自動的に出てくる。

しかしながら現実はそれで済むほど簡単ではない。

もし簡単であれば医師の誰もが診断書を普通に書いているはずであり、専門病院に送ることはないはずである。
以下に、筆者が経験したケースを参考として列挙する。
2)診断書の対応のケース
1.幼稚園や学校に通っている小児の場合
診断書を求めてくるのは幼稚園や学校へ、種々の生活の個別の対応を求めるときや、集団から児が排他され(そうになっ)た時である。

狭義のSHSであれば、建物が新しくなった、改築した、ワックスを塗った、新しい室内遊具や家具を持ち込んだ、などが症状発現時にあることがほとんどであるから、それに対する善処を含めて書けばよい。

しかし、後に述べる2~5のケースと同様、必ずしも保育園、幼稚園、学校では無症状の他の児のことも考えると容易には対応できないことも多々ある。
2.会社や事業所に勤めている成人の場合
症状が強いため業務軽減、病休、休職、職場変更などの際に診断書を要求される。

典型的SHSでは労災認定も可能となる。

しかし、典型的でない場合には「疑い」だけではなかなか会社は対応してはくれない。

診断書を書く方も「業務軽減が望ましい」とか「職場を変更することも考慮されたい」という婉曲的な書き方となる。
3.症状の原因が新築家屋やリフォームにあり、損害賠償や転居などを要求するための診断書を求められた場合これも典型的なSHSであれば診断書に明確に書けばあとは示談や裁判で決着してもらうことになる。

しかし典型的でない場合は、診断書だけでは有症状者が複数でないと相手方はなかなか対応しないことが多い。
4.近隣の住宅や工場、作業所からの化学物質等の飛散でSHS様の症状が出ていると考えて来院し診断書を求められた場合
これには最終的に発生源での物質測定が必要となるために、診断書上は「疑い」としか書けないことが多い。

勿論、集団で患者が発生した場合には別で、監督官庁に届けることになる。
5.その他のケース
室内に新しい家具、敷物等を持ち込んでSHSの症状が出た場合は、それを特定できれば診断書は書ける。
3)まとめ
典型的なSHSや高濃度のVOCsが検出された場合を除くと診断書の記載は難しいことが多い。

それは、この疾患が基本的に、誰もが認める診断確定の客観的指標を現在の医学では有していないという弱点があるからである。

診断書作成においては、診断基準に則った診断と適切な鑑別診断を行うことが必要である。