有害化学物質に対する暴露指標と感受性要因2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・遺伝的感受性要因
有害化学物質に対する感受性の違いは,健康リスク評価を行う上で重要,かつ難解な問題である。

例えば,同じ環境に居住していても,花粉症などのアレルギーやシックハウス症候群などに罹患する集団としない集団が存在する。

感受性要因には年齢,性差,既往歴なども考え得るが,遺伝的に支配されているものも知られている。2001年2月,国際共同チームと米国セレラ社がそれぞれヒト全ゲノム解読結果を同時発表したことは記憶に新しい。

その後ポストゲノム研究の一環として最も注目を浴びてきたライフサイエンスにおける研究テーマの一つが,遺伝子における1カ所の塩基配列の違いを調べる一塩基多型解析(SNP解析とも呼ばれる)である。

SNP解析結果は,テーラーメイド治療にも使えることから,SNP解析は世界中の研究機関が特許の取得に奔走している分野ではあるが,有害化学物質に対する各人の感受性もこの一塩基多型に由来しているものがあるのではないかと考えられる。

化学物質環境リスク研究センターでは,SNP解析装置を導入し,いくつかの薬物代謝酵素のSNPを調べることによりヒト遺伝子に存在する遺伝的化学物質感受性要因を明らかにしようと試みている。

図3には,SNPの検出方法と共に,アルデヒドジヒドロゲナーゼ2という酵素における活性中心の一塩基多型解析の一例を示した。血液型と同じことであるが,遺伝子は父と母それぞれから一個ずつもらっているので,通常一組の対立遺伝子として存在する。

図3において,一塩基多型が存在する場所の塩基が,両者ともC,それぞれCとT,両者ともTの3例を示した。

Cが正常に働く酵素の蛋白をコードした塩基配列であり,Tが酵素活性を示さない配列である(ここでは相補的塩基を示した)。

ちなみに私自身はC/T型であり,父親か母親の一方からアルデヒドを代謝しにくい遺伝的体質を受け継いでいることになる。

前述のヒ素の代謝に関する酵素の一塩基多型も存在しうると考えているが,様々な有害化学物質に対してどの様な遺伝的感受性要因が存在しうるのかについて,これからさらに研究を進めていく必要がある。

図省略

(ひらの せいしろう,化学物質環境リスク研究センター総合研究官)