・Ⅲ アレルギー性鼻炎の臨床症状と診断法
花粉の鼻腔への侵入後に直ちに生じる発作性反復性のくしゃみ、水様性
鼻漏、鼻閉の3主徴に加え、患者の約50%では、抗原侵入後数時間で鼻閉
を中心とした遅発症状が認められる。
問診では症状とその程度以外に、好発期、合併症、既往歴、家族歴も重
要である。
典型的なアレルギー性鼻炎患者では、蒼白に浮腫状に腫脹した
鼻粘膜と水様性分泌液が鼻鏡で観察されるとされるが、花粉症では発赤し
た鼻粘膜が多くの場合にみられる。また、鼻水には多数の好酸球が認めら
れる。
花粉症が症状から強く疑われれば、皮膚テストや血清特異IgE抗体定量により診断・治療方針の決定に進む。
誘発テストはハウスダスト、カモガヤ以外には誘発検査に使用するティスクが入手出来ない為一般には行われていない。
典型的な鼻炎症状を持ち、鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または血清IgE抗体陽性)が陽性ならばアレルギー性鼻炎と診断できる。
典型症状を有し、アレルギー検査でIgE抗体が明らかに陽性なら花粉症と
診断することが可能である(表1)。
鑑別として急性感染性上気道炎(好中
球増加を伴う粘性あるいは粘膿性の鼻汁、経過は短い)、血管運動性鼻炎(類似の鼻症状示すがアレルギー検査で全て陰性)、好酸球増多性鼻炎(類似の症状示し、鼻汁に好酸球増多認めるが、他のアレルギー検査が陰性)などがあるが、これらの症患の頻度はアレルギー性鼻炎の1割以下と少ない。
Ⅳ ホルムアルデヒドのアレルギー性鼻炎への影響
高濃度のホルムアルデヒドに曝露される医学部解剖実習生を対象にした調査では、ホルムアルデヒド吸入により総IgE、特異的IgE値には明らかな変動は認められなかった。
一方、アレルギー性鼻炎合併者のヒスタミンに対する鼻粘膜の反応性は一過性に亢進がみられた。
但し、実習終了後にはほとんどが改善している。このような過敏性亢進はアレルギー性鼻炎合併者のみに認められた。
さらに嗅覚については、嗅覚検査において一過性に嗅覚閾値の上昇がアレルギー性鼻炎合併者のみに認められた。
ただ、嗅覚閾値の低下は認められなかった。
ホルムアルデヒドによりアレルギー性鼻炎患者で、鼻粘膜過敏性亢進、嗅覚障害が生じやすいことが考えられる。
但し、反応はホルムアルデヒドの刺激が無くなれば可逆的である可能性が高い。