・2.狭義のシックハウス症候群
シックハウス症候群の概念は前述したように広範囲の病態を含むため、中毒、アレルギーなどの疾患以外で、微量の化学物質により発生する病態未解明の状態を、狭義のシックハウス症候群として扱うことを、2007年に厚生労働科学研究費補助金による合同研究班(秋山と相澤主任研究者)で合意した。
化学物質により発生する狭義のシックハウス症候群は、「建物内環境における、化学物質の関与が想定される皮膚・粘膜症状や、頭痛・倦怠感等の多彩な非特異的症状群で、明らかな中毒、アレルギーなど、病因や病態が医学的に解明されているものを除く」と定義された (2)。
また狭義のシックハウス症候群の診断基準を前述した合同研究班会議で検討し、平成19年12月に合意し、さらに20年12月の班会議で基準を改定した(表2)。
特定の部屋、建物内で症状が出現し、そこを離れれば症状が改善することがシックハウス症候群の特徴であり、症状発生時点で、室内空気中の化学物質濃度が指針値を超えていれば、強い根拠となると考えた。
しかしながら測定値が低くても症状が発生する場合もあり、また発生時に測定されていない場合でも、診断を否定する根拠にはならないと考えられる。
すなわち表2の1,2,3項目は必須、4番目の項目は参考としてよいと思われる。
3.今後の展望
狭義のシックハウス症候群の定義および診断基準に適合する症例が、全国的にどの程度発生しているか疫学調査を行い、患者の背景、診療内容、予後などについて明らかにすることは、今後の対策を立案する上で必要であると考えられる。
表2 狭義(化学物質による)シックハウス症候群の定義と診断基準(2008.12.秋山・相澤合同班会議合意)
定義
建物内環境における化学物質の関与が想定される、皮膚・粘膜症状や、頭痛・倦怠感等の多彩な非特異的症状群で、明らかな中毒、アレルギーなど、病因
や病態が医学的に解明されているものを除く。
診断基準
1.
発症のきっかけが、転居、建物※の新築・増改築・改修、新らしい備品、日用品の使用等である。
2. 特定の部屋、建物内で症状が出現する。
3. 問題になった場所から離れると、症状が改善する。
4.
室内空気汚染が認められれば、強い根拠となる。
(※ 建物とは、個人の住居の他に職場や学校等を含む)