ディーゼル排気吸入によるスギ花粉症の悪化には,ガス成分と微粒子の両方とも関与する2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・実験では, アレルゲン特異的免疫グロブリンE (IgE) 抗体産生を指標として, 大気汚染によるマウスの免疫応答の増強を評価した.

5週齢の雌性 BDF マウスを1群60匹, 5群に分けた. ディーゼル排気 (DE, 粒子 3.24 mg/m3;二酸化窒素 1.0 ppm) 群, 関東ローム粉 (KLD, 粒子 3.29 mg/m3;二酸化窒素 0.01 ppm) 群, 粒子除去ディーセル排気 (DEG, 粒子 0.01 mg/m3;二酸化窒素 1.1 ppm) 群および清浄空気 (花粉単独) 群の4群は, 1日16時間の曝露を1週間に5日間, 24週間行い, 曝露期間中, スギ花粉 (日本スギ花粉, 約 550,000 粒/m3) を週に2回曝露した.

スギ花粉は千葉および山梨県で1995~1998年の間に採取した.

吸入時間外は, 清浄空気中で飼育した. 残りの1群は, スギ花粉を曝露しない清浄空気対照群とした.

マウス血清中のスギ花粉アレルゲン特異的 IgE 抗体価を ELISA 法で測定した.

曝露第12週および24週の DE, KLD および DEG 群の平均力価は花粉単独群よりも高かったが, 有意ではなかった.

スギ花粉特異的 IgE 抗体陽性を示した動物の割合は, 曝露12週では DE 群および花粉単独群で22%, KLD 群および DEG 群で27%であり, 群間差は認められなかった.

しかし, 曝露24週には, DE 群, KLD 群および DEG 群で,それぞれ73, 63および67%となり, 花粉単独群の33%よりも有意に増加した.

また, スギ花粉に対するマウス頸部リンパ節細胞の増殖応答は, DE 群および KLD 群で用量依存的な増加がわずかに認められたが, DEG 群ではみられなかった.

一方, サイトカイン産生に対する影響を調べるため, 鼻洗浄液中のサイトカイン (インターフェロン-γおよびインターロイキン-4) 量を測定した.

DE 群および DEG 群では, インターフェロン-γの減少とインターロイキン-4の増加がみられたが, KLD 群では認められなかった.

以上の結果から, 本実験で検討した大気汚染物質である DE, KLD および DEG は全て, マウスの IgE 抗体産生を増大させ, それぞれ類似した免疫応答調節活性を持つことが示唆された.

しかしマウスでは, 花粉, 微粒子およびガス成分曝露による感作の早期には, これらは異なった機序で IgE 抗体産生を促進すると考えられた.

大気汚染物質中の微粒子はTリンパ球の活性を介して, また, ガス成分はTリンパ球にはほとんど作用せず, サイトカインネットワークの異常を誘発して, それぞれ IgE 抗体産生を促進することが明らかとなった.

Maejima K1, Tamura K1, Nakajima T1, Taniguchi Y2, Saito S3, Takenaka, H4
(1 日本自動車研究所, 茨城, 2 林原生物化学研究所, 岡山, 3 東京慈恵会医科大学, DNA 医学研究所, 東京, 4 大阪医科大学 耳鼻咽喉科, 大阪)