・ 日本国内における工場等の固定発生源からのVOC排出量は年間約150万トン(2000年度)にのぼると報告されている。
排出源は塗料、塗装、給油所等々の多岐にわたっている。
政令によるVOC排出規制で対象となる排出施設は次の6類型の施設である。
(1)化学製品の製造の用に供する乾燥施設
(2)吹付塗装施設及び塗装の用に供する乾燥施設
(3)接着の用に供する乾燥施設
(4)印刷の用に供する乾燥施設(オフセット輪転印刷、グラビア印刷)
(5)工業製品の洗浄施設(乾燥施設を含む)
(6)貯蔵タンク(ガソリン、原油等)
それぞれの施設の規制では、規模要件が定められており、例えば「吹付塗装施設」では排風機の排風能力が100,000(m3/時)以上のものとなっている。
全般に見て規制の対象は大規模な施設であり、規制施設も業界での自主的取り組みを最大限尊重した上で限定的なものとなっている。
自主的取り組みとは、民間(個別企業、業界団体)が2010年度のVOC排出量の目標値を定めて自主行動計画を作成し、「原材料の選別」、「工程管理」、「施設改善」、「処理装置の設置」等の項目について排出抑制対策を行い、自己検証・評価を行うものである。国や地方自治体はこうした自主的取り組みを支援するとともに、排出濃度規制や改善命令等の直接規制とをあわせVOCの効果的排出抑制を図ろうとしている。
2010年度までの30%の削減目標の内訳は、直接規制(法規制)により10%、自主的取り組みにより20%となっている。
VOCの排出実態や排出総量及び排出抑制への取り組みは地域(自治体)によってかなり異なっている。
2010年度までにVOC排出総量を30%程度抑制する目標達成するためにVOCの発生が多い自治体では地域に見合った条例を制定したり、制定(改定)を予定したりしている。
条例の内容は自治体によって異なるが、政令で定める発生源(6類型)に別の発生源を加えたり(例えば給油所やドライクリーニング工場)、裾きり要件を厳しくすることにより、地域のVOC総排出量を削減しようとしている。
しかしながら、中小企業に対し徹底した自主的取り組みを促すことや、厳しい法的規制を行うことにも限界があり、条例が定める施設やその規模については今後とも十分な検討が必要である。
こうした状況の中で、VOCの大きな排出源とみなされる屋外建築物に使用される塗料については規制対象外であるなど、規制施設についても課題がある。
また、自主的取り組みに行政がどこまで関与するかも明確ではない。
今後、取り組みの見直しを継続的に図るとともに、水系塗料の開発、使用とそれを支援する体制作りなど、VOC排出量を積極的に削減する方策が求められている。