・<あなたの酵素銀行、大丈夫???>
今回は今までのお話の集大成として、いよいよ最新の酵素栄養学の根幹にふれていきたいと思います。
アメリカでは50年以上前から、エドワード・ハウエル博士によって酵素栄養学が確立されています。酵素というのは体内で物質を変換する働き(生体の化学反応の触媒)のことで、体内で起こるあらゆる反応は酵素によって担われています。
酵素がなければ一切の生体反応は起こせず、ヒトは1秒たりとも生きることはできません。
体内の酵素は大きく2種類に分けられます。
ひとつは胃腸管の中で分泌されて食物の消化・分解を行なう24種類の「消化酵素」です。
もう1種類は、「代謝酵素」です。
代謝酵素は、(1)エネルギーATPを産生する、(2)要らなくなったものを解毒、排出する、(3)細胞を再生、修復する、(4)遺伝子を修復する――といったあらゆる生命活動を担っています。
「代謝酵素」こそが命の酵素です。
しかも1つの反応に1つの酵素しか反応しませんので(基質特異性と言います)、身体全体では3,000~5,000種類もの代謝酵素が働いているのです。
かつて、酵素は必要に応じて毎日無尽蔵に作られていると思われていました。
ところが、ハウエル博士は一生の間に合成できる酵素の量は遺伝子に規定されており、あたかも「酵素銀行」から引き出して使うかのごとく有限であり、年齢とともに減少していくことを見出したのです。
このことは我々が使う携帯電話の電池容量にも似ています。
酵素は毎日、特に夜寝ている間に充電します。
ですが、時間が経ってくるとバッテリー容量は減ってきます。酵素も同じです。したがって酵素食を摂り(どのように摂るかは次号以降でお話します)、酵素の無駄遣いを抑えている方は、年齢とともになだらかな酵素の減り方をしますが、暴飲暴食、夜食、加熱食やインスタント食、過剰の肉食を続けてきた人は年齢とともに体内酵素が激減します。
いずれにしても子供のころは比較的酵素は多くありますから、どのような食生活でも子供は症状に現れにくいのですが、年齢とともにやがて病気という形で現れてきます。
以前、「日本人40歳寿命説」みたいなものが言われましたが、現状の食生活では遠くない将来、あり得る話です。
<酵素不足が現代病の根本原因だった!>
では、皆さんがものを食べたとき、消化酵素はどのように働いているのでしょうか。
まず咀嚼して唾液(アミラーゼ:糖質分解)が混じり、胃の上部(噴門)に落ちていきますが、ここは牛や羊などの第一胃に相当するところで、消化酵素液は分泌されません。
その後、胃の下に下がり、ペプシン(蛋白分解)が分泌、さらに十二指腸に下って胆汁、そして膵臓から蛋白、脂肪、炭水化物分解のあらゆる酵素が分泌され、栄養素が分解、小腸に下って吸収され、大腸で便になっていきます。
そしてこの消化酵素と現代病の間に、重大な関係があることが解ってきました。
酵素全体で産生量に限界があるとすると、消化酵素と代謝酵素の合計が一定ということになります。
過食、動物性蛋白や白砂糖の摂り過ぎ、夜食や睡眠不足、そして何より酵素分の多い野菜や果物・発酵食品が少ないと、消化酵素を浪費します。
浪費するというのは、大量に分泌しないと消化できないという意味です。
皆さんも夕食で肉を食べ過ぎたり、夜遅くに食べたら、翌朝ムカムカした経験がありませんか? そんな時には消化のために胃酸や消化酵素が過剰に分泌され、胸やけが起こるのです。
消化酵素を過剰に分泌すれば、代謝酵素の産生が減ってしまいます。
しかし代謝酵素の働きは生命活動そのものです。
エネルギーの産生が落ち、解毒力が低下し、細胞の再生や遺伝子の修復能が衰えてきます。
この状態は何ですか? そう、『病気』です。
つまり消化酵素の無駄遣いが代謝酵素の不足を招き、現代病を作りだしているのです。
身体のほかの器官に比べて、消化活動は非常に効率の悪い、エネルギーを要する作業です。
「酵素栄養学に基づいた酵素を充分働かせる食事・食事法を摂らないことが多くの病気を招いている・・・・・・」残念ながら、医師・栄養士を含めてほとんどの人は、このことに気づいていません。
次号では、ではどうしたらよいのか、その対処法「代謝を上げる酵素を充分働かせる食事とは何なのか」をお話したいと思います