『茶のしずく』問題座談会4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・<化粧品業界の構造的な問題も原因に>

 福冨 確かに、私が診ております患者さんのうち、自ら自分の小麦アレルギーの原因が石鹸だと気付いた患者さんは一人もいませんでした。

石鹸による被害を自覚していないわけですから、メーカーが徹底して注意情報を出さないと被害が拡大するのは当然でしょう。

私の方からもこの点をメーカー側に指摘しましたが、何の対応もとってもらえませんでした。
 少し話は変わりますが、この事件の原因のひとつとして、化粧品業界の構造的な問題、システム上の問題があるかもしれません。

これは私も最近になってわかってきたことなんですが、製品をつくるメーカー(製品メーカー)と、その原材料をつくるメーカー(原料メーカー)との間には、原材料成分の配合方法や製造方法については、教えないし、聞かない、という不文律のようなものがあるため、消費者に安全性に関する情報を発信すべき製品メーカー側も実はその原材料がどのように作られているか詳細には知らないんです。

こういう構造はリスクマネージメントという意味で少し問題があるかもしれません。

 ――厚労省は通知という形で注意喚起情報を出しましたが、もっと踏み込んだ形で自主回収を指導することはできなかったのでしょうか。

 神山 当然、指導したのではないでしょうか。

 河岡 2010年10月に厚労省から注意情報が出された直後に、悠香はホームページ上でそのことを出していましたが、それを読んで「今、自分が使っている石鹸は危ない」と思う人は少ないと感じました。

 福冨 私の患者さんもそれを見て激怒していました。自社製品でこうした被害が起きている、とは一切書かれていないのです。

事情を知らない人が見れば何を言っているのかさっぱりわからない内容です。悠香は、それまでに何人もの被害者が出ていることを把握していたわけですから、はっきり「『茶のしずく』石鹸でアレルギーが発症した」と事実関係を公表して、少なくとも小麦アレルギーの患者さんは石鹸の使用をすぐに中止すべき、これまでアレルギーのない方も石鹸使用後にアレルギー症状があればすぐに使用を中止して医療機関を受診すべきなど、適切に情報提供すべきだったのです。

それをしないであやふやな情報を公示し、販売を続けていたから患者さんは怒っているのです。

 神山 厚労省の通知には、「悠香」という社名も、『茶のしずく』という製品名も出していないんです。
 昔、「豊田商事」事件がありました。金の地金を販売していたんですが、購入者に現物は渡さず、代金と引き換えに証券を渡す手口で顧客から不正に代金を集めていた事件です。

その時も、当時の通産省は、注意喚起のパンフレットをつくったのですが、具体的な社名は伏せて、A社と書いてあるんです。

この例のように行政は最初の通知では、なかなか特定の業者名を出さないんですね。こうした対応は、ちょっと問題でしょう。
 悠香の例でも、消費者は加水分解コムギ末を使っていると自覚している人は少ないですから、その原料名を挙げて注意して下さいと言われてもピンときませんよ。

また、厚労省の通知は、直接、消費者に発信する文書ではありません。都道府県に宛てた文書です。

早期の被害防止という観点から、消費者向けに通知を出すべきではないでしょうか。

 ――ご指摘のように、もっと消費者にわかりやすい内容で出すことが大事ですね。

 神山 厚労省は、もともと消費者の顔を見て仕事をする役所ではありませんので、あまり期待してもしょうがないかのかも知れませんが、消費者事故を一元管理する消費者庁は別です。

当然、消費者庁は、『茶のしずく』事件の情報は掴んでいたはずです。消費者庁はもっと早い段階から、きちんとした対応をとるべきだったと思います。

 福冨 行政機関をかばうわけではありませんが、厚労省も消費者庁も、当初は事の重大さをよく認識されていなかったのかもしれません。

アレルギー疾患に詳しい医師でさえ、最初は何が起こっているのか、わからないという状況でしたから、これはやむを得ないかもしれません。

 神山 話はそれますが、悠香は途中で成分を変更したということを聞いていますが。

 福冨 低分子の成分に替えています。