・注1:浮腫など、炎症が始まって、6~24時間後(初期段階)に、血管内から炎症局所の組織中に、好中球が、遊走して来る。
そして、炎症が始まって、24~48時間後に単球やリンパ球が、遊走して来る。
好中球と単球・マクロファージは、細菌や異物を貪食し、過酸化水素(H2O2)を産生する。また、炎症に伴い、スーパーオキサイド(O2-)、ヒドロキシルラジカル(HO・)など、他の活性酸素も産生される。
好中球は、様々なプロテアーゼ(エラスターゼ)も分泌する。
好中球、好塩基球、マクロファージは、PAFを産生し、血小板凝集、血管透過性亢進(ヒスタミンより強力)、好酸球の遊走が、起きる。
炎症時に、炎症局所の血管内皮細胞は、セレクチン(細胞接着分子)を発現する。
血管内の好中球や単球など白血球は、白血球表面のセレクチンリガンド(糖鎖)で、血管内皮細胞表面のセレクチン(細胞接着分子)と、結合し、遊走を始める。
好中球から産生される、PAFやLTB4は、好酸球を刺激して、好酸球の基底膜通過を増加させる。刺激された好酸球は、autocrineな機序で、PAFを産生する。
なお、慢性の炎症で重要な働きをするのは、単球・マクロファージで、Tリンパ球や、好酸球も、炎症局所に浸潤する。
注2:急性炎症の局所では、初期には、蛋白成分の少ない濾出液が、血管内から組織中に漏出して来る。次第に、血漿蛋白を含む蛋白液が、血管内から組織中に漏出して来る。
出て行く。濾出液の漏出には、主に、静水圧が関与(毛細血管の清水圧が、組織の浸透圧より上昇して、血管内から組織中に、液体成分が濾出transudationする)し、蛋白液の漏出には、血管透過性亢進が関与(蛋白成分が滲出exudationする)する。
蛋白液が漏出(滲出)すると、血液は、濃縮して、血液粘稠度が増加し、血流が停滞する(鬱血して、古い血液が貯留する)。
炎症局所では、血管透過性が亢進して、NSAIDsなどの薬剤も、組織へ移行し易くなる。
注3:炎症では、血管透過性が亢進し、血管内皮細胞のアクチンが収縮し、血管内皮細胞の隙間が広がって、血液中から、血漿などの水分が、局所に漏出し、炎症性の浮腫が生じる為、腫脹が起こる。
PGE2、PGD2、PGF2αは、血管を拡張させたり、血管透過性を亢進させ、炎症性浮腫を引き起こす。
血小板の濃染顆粒から放出されるセロトニンは、血管収縮作用、血管透過性亢進作用がある。
注4:活性化された補体、C3a、C5aは、アナフィラトキシン活性があり、マクロファージや肥満細胞を活性化させたり、血管透過性を亢進させたり、平滑筋を収縮させる。
注5:筋肉痛も打撲痛も、アイシングすると、早く回復する。アイシングは、2時間おきに、15分ずつ行うと良い。
特に、打撲や捻挫のように、外力で組織が損傷を受けた場合は、応急処置として、冷やすことが大切。損傷を受けた組織では、細胞が破壊され、血管も障害されると、酸素供給が低下する。
冷やすことで、周囲の細胞の代謝が抑制され、組織の酸素需要量が低下し、細胞の障害が予防されると考えれる。
冷やし方としては、直後に、一度、流水で冷やすだけでも、効果が現れる。
氷で冷やす時には、タオルなどで、直接、皮膚に氷が当らないように配慮する。
注6:内因性の発痛物質と発痛補助物質には、下記のような物が知られている。
ブラジキニン(BK)、セロトニン、ヒスタミン、カリウムイオン、プロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンI2(PGI2)、ロイコトリエン(LT)、補体、乳酸
注7:葛根湯は、カッコン(葛根:葛の根)、マオウ(麻黄:中国では草原に生えている)、タイソウ(大棗:乾燥させたナツメの実)、ケイヒ(桂皮:シナモン)、シャクヤク(芍薬:牡丹科の植物)、カンゾウ(甘草:グリチルリチンを含む)、ショウキョウ(生姜:ショウガ)の7つの生薬から、構成されている。葛根湯は、感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛みに、用いられる。
葛根湯は、寒気のある風邪の際、体を温め、発汗を促すのに効果的。
葛根:風邪の際、効果的なほか、筋肉をゆるめ、下痢を止める働きがある。
葛根湯は、自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のある人の諸症(感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎、肩こり、上半身の神経痛、じんましん)に良いとされる。
漢方薬の葛根湯は、マウスの実験結果では、インフルエンザ感染時に、IL-12の産生を増加させ、肺インフルエンザウイルス量を減少させ、IL-1の産生を抑制し、発熱や関節痛など、インフルエンザの症状を軽快させる。
葛根湯に含まれるマオウ(麻黄)は、インフルエンザウイルスが、赤血球凝集素(HA)により、赤血球表面のウイルス受容体(シアロ糖鎖)と結合するのを阻害し、インフルエンザウイルスの感染を阻止する効果があると言う。
漢方薬は、構成されている生薬の相互作用で、効果を現す。
十全大補御湯は、病気の後の体力回復に用いられるが、十全大補御湯は、リンパ球を増加(増殖)させる作用がある。
この十全大補御湯のリンパ球増殖作用は、桂皮を除くと消失するが、桂皮単独では現れず、桂皮と、他の生薬との相互作用で現れる。
生の生姜(ショウガ)には、免疫力増加作用があるジンゲロールが含まれている。ジンゲロールは、辛味成分で、抗菌作用(細菌類を殺菌する作用)がある。
ジンゲロールは、加熱や酸化で減少する。摩り下ろした生姜に含まれるジンゲロールは、空気中に放置すると、酸素と反応し酸化して減少して行く(3分後には半分になる)。
ジンゲロールは、加熱すると、熱産生作用があるショウガオールへ変化する。ショウガオールは、血管を拡張させ(PGI2増強)、血小板凝集を抑制し(TXA2抑制)、血行を良くする。
風邪をひいた時には、温めのお湯で、生姜湯(ショウガユ)を作って飲むと良い。