・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.htm
・ネコアレルギーと母親の喘息歴との関係素の性特異的発現
両親どちらかにアトピー既往歴がある幼児集団について, 出生後の喘鳴とペットの曝露との関係を調査した. 対象の幼児は505名で, 1994年の秋から1996年の夏に募集し, 両親の同意のもと, 保育者への電話質問を出生後2年までは隔月, それ以降は半年毎に行った.
毎回の電話にて, ペットを飼っているか, 以前の質問以降, 幼児に喘鳴呼吸音が認められたか否かを質問した. また, 幼児が2~3か月齢の時に居住環境から埃を採取し, ネコアレルゲン (Fel d 1) 含量を測定し, 一部の居住環境についてはイヌアレルゲン含量も測定した.
さらに, 幼児が2歳の時に血清を採取して総 IgE 濃度を測定した.
同じ幼児の経時的分析には Anderson and Gill の比例危険モデルを使用し, ネコ曝露と血清総 IgE との関係の分析には直線回帰を使用した.喘息既往歴のある母親を持つ幼児では, 喘鳴とネコの存在との間に有意な関係がみられ, 喘鳴の相対危険度は5歳まで上昇した.
一方, 父親の喘息既往歴には同様の関係はみられなかった.
反対に, 喘息既往歴の無い母親を持つ幼児では, ネコの存在あるいは居住環境の埃に8μg/g 以上の Fel d 1 が含まれている場合に喘鳴の相対危険度が低下し, 1~5歳の間, この危険度は変動しなかった.
血清総 IgE 濃度の測定結果でも, 喘息既往歴の無い母親を持つ幼児では居住環境中 Fel d 1 が 8 μg/g 以上の場合, 1 μg/g 以下の場合と比較して総 IgE 濃度が低かった.
喘息既往歴の無い母親を持つ幼児におけるネコアレルゲン曝露濃度と血清総 IgE 量との逆相関は, T-helper-2 細胞反応が変化したのか, 気道に対するネコアレルゲンの特異性のためかによって炎症と喘鳴が抑制された結果かもしれない.
一方, 喘息既往歴の有る母親を持つ幼児で, 高濃度のネコアレルゲンに曝露されると, 3歳以降に喘鳴の危険度が上昇したのは, これらの子は早期にネコアレルゲンに感作されており, 3歳以降の再曝露で発症した結果と推測された.
なお, イヌアレルゲンあるいはイヌの存在と喘鳴との関係は有意ではなかった.
以上の研究成績の限界は, ネコに対する感作の情報が欠落していること, 両親どちらかにアトピー既往歴のある幼児が調査対象であること, 幼児期には非喘息性の喘鳴も認められること, ネコアレルゲンに曝露された幼児の12.6%が3歳以降に曝露されない環境に変わったことである.
従って, 今回の成績は, ネコに対して幼児期早期に曝露された影響と継続して曝露された影響とが組み合わされたものだろう.
しかしながら, 幼児期早期のネコアレルゲン曝露は, 喘息既往歴の無い母親を持つ幼児では5歳までの喘鳴に対する抑止因子となり, 喘息既往歴の有る母親を持つ幼児では3歳以降における喘鳴の危険因子となることが示唆された