・「ホルムアルデヒド蒸気による鼻腔と肺障害の機序」
鼻腔粘膜
ホルムアルデヒドは, 無色で刺激性のある気体で, 反応性が高く多くの物質と結合し, 容易に重合する.
主に, 工業用樹脂や殺菌, 殺虫剤として使用されている.
また, 自動車の排気ガス中や多くの工場における炭化水素の不完全燃焼の際などに認められ,東京の霞が関では, 1時間に排泄される空気中の濃度が1968年および1972年でそれぞれ 0.7~1.05 ppm, 0.1~7.3 ppm と報告されている.一方, 一般家庭の室内では尿素樹脂を接着剤として使用している家具や, 喫煙, そして台所などから微量ではあるが検出されており, 尿素系樹脂を使用している家庭で室内のホルムアルデヒド濃度は 0.8~0.95 ppm あるいは 0.1~3.68 ppm であるとの報告がある.
本試験は, ホルムアルデヒドの肺に対する毒性のメカニズムを, 解明するためにを行われた.
8週齢の雄 F344 ラット各々15匹を2つのグループに分け, 145.6±3.9 ppm (高濃度)または 15.0±0.9 ppm (低濃度)のホルムアルデヒド蒸気を6時間, 1回, 鼻のみから吸入曝露し, 対照群の動物には, 空気を混入した蒸留水を曝露した.
15匹の各々のグループは, 1群5匹のサブグループに分け, 各々の第1サブグループでは, ホモジナイズした肺の非蛋白SH化合物(NPSH), 過酸化脂質 (LPO), 脂質(FFA,TG,CHO,PE,PC,SM), GSH-R, G6PDH, LDHおよびホモジナイズした鼻粘膜のNPSHの含量を測定した.
第2のサブグループでは, ホモジナイズした鼻粘膜のLPOおよび肺胞の洗浄液中の脂質 (TG,CHO,PC)の含量測定をし, さらに, 各々の第3サブグループでは, 頸静脈から血液を採取し, 血液学的 (RBC,HGB,PCV,MCV,MCH,MCHC,PLT,WBC), 血液生化学的検索(T-PRO,ALB,A/G,BUN,GLU,PL,TG,T-CHO,F-CHO,ALP,GOT,GPT,LDH,G6PDH) および器官重量 (脳, 心臓, 肺, 肝臓, 腎臓, 脾臓, 精巣) の測定および気管, 鼻腔, 肺の組織学的検索を行った.
その結果, 鼻腔粘膜と肺におけるNPSHと鼻腔粘膜におけるLPOの含有量は曝露濃度に依存して減少したが, 肺におけるLPOは増加した.
また, 肺組織と肺洗浄液中のトリグリセライド (TG), 肺組織のコレステロール (CHO) の含有量が減少したことから, サーファクタント合成の抑制が明らかにされた.
さらに, 吸入曝露に関連して鼻介骨, 気管, 肺に扁平上皮の角化亢進, 分泌物の増加, 線毛と粘膜細胞の剥離等の変化が認められた.
以上の結果から, 145.6±3.9 ppm のホルムアルデヒド蒸気は, 脂質の過酸化あるいは肺胞のサーファクタントの含量の変化を伴った鼻粘膜および肺の障害を惹起することが明らかとなった.
runより:こちらも悩みましたがシックハウス症候群に入れました。
上記症状のある方はシックハウス症候群かもしれないので・・・