・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.htm
・「家庭用殺虫剤 吸入毒性の評価」
家庭用殺虫剤の安全性の問題についてインドネシア保健省が主催してワークショップが開かれた.
現地の研究者,行政担当者,台湾,香港,WHO 代表,欧州の製造企業の研究者ら51名が参加した.
家庭用殺虫剤は世界中で用いられているが,とくに熱帯地方では蚊その他の昆虫に日々対処することが疾病の伝搬を予防するために重要である.
家庭用殺虫剤として用いられているのは主として合成 pyrethroids(ピレスロイド) であるが,一部の製品にはカルバミン酸剤,有機リン剤,有機塩素剤も用いられている.殺虫剤は種々の様態の製品,缶入り噴霧剤,蚊取り線香,除放性揮発剤(蚊取りマット)の形で提供されている.
個々の主成分の一般的な毒性は試験されて,安全性は確認されているが,試験法は,使用の実態に添っていないと批判される.
蚊取り線香はもっぱらアジア,アフリカ,南アメリカで使用されているが,年間使用量は300億本に達しようとしている.
合成の pyrethroid 製剤も多数現れている.
スプレー方式の殺虫剤(急性毒性のデータが重要)とは異なり,蚊取り線香方式では慢性の吸入毒性が問題である.
また,殺虫剤成分以外の煙の成分についても安全性の検討が必要であろう.気道粘膜に対する刺激性の影響によって他の物質の経粘膜吸収を高めるなど,相互作用を起こすことも考えられるが,十分に検討されていない.
蚊取り線香の安全性確保のためには,低濃度の長期吸入毒性試験が必要であるが,試験はもっぱらラットにおける標準的な方法(煙流に対する鼻のみの,6 hr/day, 5 day/week の曝露)で行われている.
使用の実際により近い曝露方法(とくに長時間連続の)を求めることで諸家の意見は一致していたが,上記の吸入毒性試験の標準的な曝露方法は,小動物における試験では,全身曝露法に比べて再現性が高く,均一の濃度の気流を作りやすい利点は認められるので,採用されている.当面この方法によるべきであろう.
蚊取り線香の煙そのものの検査は困難であるため行われていないが,配合する成分は非遺伝毒性,非刺激性,非肺毒性のものとすべきである.
成形するための基剤として木材やヤシ殻,糊着剤などが用いられているがそれらの燃焼による生成物が問題となる.