ホルムアルデヒド曝露のヒト,動物の生殖発生への影響の再検討2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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動物実験: ラット,マウス,イヌ,ハムスターを用いた実験の報告が多数ある.

投与経路は,皮下,筋肉内,腹腔内が多く,ヒトの生殖発生影響について有用な情報ではない.

経口投与によるものは最初の接触部位である胃にのみ変化が起こっている.こうした条件で,発生毒性を調べた報告が22報,生殖毒性の報告が7報あった.
吸入曝露での発生毒性試験がロシアの研究者によって行われているが,30 ppm に10~15日曝露したところ,母ラットが死亡し,胎児毒性もあったが,催奇形性はなく,10 ppm でも母獣と胎児に毒性があった.

作業環境基準の濃度の曝露では胎児毒性は認められていない.

ただし, Kitaeva ら (1990) は低濃度ホルムアルデヒドへの長期曝露で胎児の骨髄細胞に細胞毒性を認めたと報告した.

これは追試で確認されていない.

疫学的調査: 作業時曝露によるホルムアルデヒドの生殖発生毒性に関する疫学調査が11報あった.

そのうち自然流産について調査したものが9報あり,うち4報は流産は曝露群に高率であるとし,4報は関連が認められないとし, 1報はリスク計算をしていない.

そもそもヒトの妊娠の半数は自然流産に終わるとされ,その大部分は妊娠2週以前に起こる (Kline, 1986)ので,気づかれずに終わることも多いであろう.

疫学調査では,2週目までの早期流産に言及したものはない.

臨床的に確認された妊娠でも15%は自然流産に至るといわれる (Kline, 1986) が,この時期の流産についても,おそらく医院を受診しない女性も多いであろうこと, 受診率には社会的経済的また教育水準によって差があることが考慮されないと正しい評価が出来ない.

自然流産の約半数には染色体異常があると報告されている (Warburton, 1987) が, 調査のいずれも染色体異常の有無を分けて流産率の差を調べたものはなかった.

さらに,流産の重要な要因である年齢,重量物持ち上げ,長時間の立作業,喫煙等について交絡を調整したものはなかった.

先天異常(奇形)を調査したものが 4報あったが,症例対照調査で曝露によるリスクの増加を認めたものはなかった.生下時体重の調査が2報,いずれも 2,500 g 以下の低体重児出産と作業曝露との関連を認めていない.

ただし,3,000 g 以下を集計すると曝露母に多いとするものがあった.

いずれの調査も交絡因子(喫煙,大酒,栄養)を考慮していない.不妊との関連を認めたとするものが2報あり,結婚して12か月妊娠しない夫婦群に,高いホルムアルデヒド曝露を受けていた女性が多いという.交絡因子の考察も行っているが,不妊の半分の責任がある男性側の分析は行っていない.

結論: このように,調査・研究の報告について再調査を行った結果,どの報告も曝露の評価が不正確で,代謝の関与が考慮されておらず, 動物実験も曝露条件が非現実的で,疫学調査も生物学的基礎データや交絡因子の考慮がなく, 調査の偏向に配慮していない等の問題があった.

作業上 (基準値以下の作業場で) 受けるホルムアルデヒド曝露により生殖発生に影響があるという説を支持する根拠はないと考えられる.


runより:以前はこう考えられていたんですね。

その為5年前までの建築物はホルムアルデヒドだらけです。

ホルムアルデヒドは無くなるまで揮発し続けます。

油断はできませんね(-。-;)