・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.html
・ホルムアルデヒド曝露のヒト,動物の生殖発生への影響の再検討
ホルムアルデヒドは環境中に遍在しており, 細胞中でも発生する.
その有害性は粘膜皮膚の刺激性が主要なものである.
しかし最近,疫学調査で職業的にホルムアルデヒドに曝露されている女性に起こった生殖機能と曝露とが関連があるという報告があったので,その生物学的妥当性を文献によって検討した.
Medline と Toxline によって1966~1999年9月のヒトおよび動物実験について,ホルムアルデヒドと生殖関係の各種キーワードで,英語以外の文献も含めて検索, 収集し,検討した.
ホルムアルデヒドの曝露: ホルムアルデヒドはガス体または水溶液(ホルマリン)としてヒトに接触するので,曝露経路は吸入か経皮である.
しかし,経皮吸収は極めて低いため,吸入曝露が問題になる.曝露が起こる職業は,医学関係 (病理,解剖,検査室,消毒), 葬儀業, 化学工業 (合成,樹脂製造,型打ち,写真), 繊維業,製材業(合板,熱成形,家具製造)などがある.曝露の程度を評価するのに,対象者個人ごとに時間を追って実測する方法は困難なので採用している研究は少数で,あっても対象者数が少ない.
そのような実例では 0.61~1.32 ppm-hr という数値の報告がある.曝露量を種々の条件や症状から推定する方法も取られているが,変動幅が大きく根拠としてやや弱い.
曝露履歴についての自己申告(質問表)によっている調査が多いが,これには調査による偏向が入る可能性が大きい.
しかし,これらの方法のいずれかが採用されている.
ホルムアルデヒドの代謝: 外因性でも内因性でもホルムアルデヒドは速やかに代謝されて蟻酸になる.
これはホルムアルデヒドほど反応性が強くなく,二酸化炭素になるかそのまま尿中に排泄される.
代謝されないホルムアルデヒドが毒性を発揮する.
これは求電子的カルボニル基を有し,反応性が高い.
とくに,タンパクのアミノ酸や DNA の求核部位と結合する.
この反応は生体に接触する局所で起こる.
従って, 局所反応,代謝を受けなかった部分だけが全身性の影響を起こすわけで,その比率は小さい. 胎児がホルムアルデヒドの毒性の標的となることは考えにくい.