ホルムアルデヒドの胎児毒性を見直す | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.html
・ホルムアルデヒドの胎児毒性を見直す
 ホルムアルデヒドには広い用途があり,多様な製品に用いられている.尿素樹脂,フェノール樹脂にも含まれ,建材ボードの接着剤,繊維製品の処理等に用いられている.

米国労働安全衛生局 (OSHA) の推計では年間210万人が職業的にホルムアルデヒドに曝露されている.

ホルムアルデヒドの急性の生体影響濃度は,0.05~0.1 ppm が臭覚の閾値,0.01~2.0 ppm で眼刺激感, 1.0~3.0 ppm で眼,鼻腔,咽喉,上部気道の刺激,10~20 ppm で呼吸困難,100 ppm 以上では死亡に至る.

OSHA の許容限度は 8 hr 平均で 0.75 ppm (15分以内なら 2 ppm,作業場は 0.5 ppm) とされている [空気中 1 ppm は 1.23 mg/m3].長期的影響では皮膚,気道の過敏症が知られている.ホルムアルデヒドは EPA により, ヒト発癌可能性物質 (2A) に, IARC でも 2A に分類されており,NTP でも発癌性陽性とされている.
 ホルムアルデヒドの生殖発生毒性は軽微と考えられてきた.その根拠は,EPA や WHO における(1989年以前の)疫学調査と,動物実験で催奇形性が認められないという報告にあった.

しかし, 最近の疫学調査で,職業的ホルムアルデヒド曝露(製材業,実験作業者,化粧品研究者)と初妊の遅延とに関連があること,自然流産のリスクも高いことが指摘された.

そこでホルムアルデヒドの生殖発生毒性を再検討し,最近の文献を見直した.
 ホルムアルデヒドの体内分布 (Katakura et al., 1990, 91, 93): 妊娠マウスに14C-ホルムアルデヒドを静脈内投与し,全身オートラジオグラフィーによって分布を検討した.

ホルムアルデヒドは母体の肝,肺,その他に分布し, 子宮,胎盤,胎児にも分布した.母体,胎児とも肝の放射能の20~50%は DNA 分画にあった.
 吸入曝露の胚細胞,骨髄細胞への影響 (Kitayeva et al., 1990): 雌ラットを1日4時間, 4か月間ホルムアルデヒド (0.5 および 1.5 mg/m3) に曝露し,その間無処置雄と交配して妊娠させ,胚を採取して検査した.

胚の発達には 0.5 mg/m3 曝露の影響はなかったが,1.5 では胚盤の構造変化が起こり,細胞核の濃縮が認められた.

骨髄細胞の染色体異常が 0.5 mg/m3 群で増加し,1.5 ではさらに増加し,異数性細胞も増加していた.
 細胞内器官および酵素への影響 (Merkuryeva et al., 1996): 妊娠ラットにホルムアルデヒド水溶液を経口投与 (8 mg/kg 連日) すると,胎児死亡率増加, ミトコンドリア酵素の活性の低下が見られ, 酸化的リン酸化とエネルギー代謝が障害された.
 その他4報を合わせて総合的に検討すると, 血中ホルムアルデヒドは胎児に移行すること, DNA と結合すること,また通常の発生毒性試験では調べられていない酵素活性等に注目すると, 変化が認められることが新たに判明した.

これらの研究には, 静脈内投与や強制経口投与など実験条件に問題はあるが,今後ホルムアルデヒドの胎児細胞機能に対する影響を確定する必要がある.
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