・測定対象者の毛髪中ニコチンレベルは,検出限界(0.1 ng/mg毛髪)以下(31例)から 24.7 ng/mg 毛髪の範囲に分布していた.
喫煙者と接触がある子供 (喫煙する家族あるいは訪問者を持つ子供) の毛髪中ニコチンレベルは,接触がない子供 (喫煙する家族も訪問者も持たない子供) のそれより有意に高かった(Wilcoxon: χ2 = 26.46,p < 0.0001).同様に,喫煙する母親を持つ子供のニコチンレベルは,喫煙しない母親を持つ子供のそれよりも有意に高かった (Wilcoxon: χ2 = 39.72,p < 0.0001).喫煙する父親を持つ子供と喫煙しない父親を持つ子供のニコチンレベルも,母親の場合と同様に有意差はあったが,その差は母親での差よりも小さかった (Wilcoxon: χ2 = 6.95,p < 0.0085).
これは子供が母親と一緒に過ごす時間の方が,父親との時間よりも長いためであると考えられる.
家の外だけで喫煙する家族を持つ子供と家の中でも喫煙する家族を持つ子供の毛髪中ニコチンレベルはほとんど同じであった.
この結果は,両親への聞き取り調査によって得られた喫煙場所についての情報が不正確であったことによると考えられる.
また,喫煙する家族を持つ子供を対象に,家の外で過ごす時間が週に15時間以上の子供と15時間未満の子供に分類した.家の中でも喫煙する家族を持つ子供の場合,戸外で過ごす時間数に関わらず,ニコチンレベルには差が認められなかった.
このように差がみられなかった背景には,本当に戸外で過ごす時間が影響しないか,あるいは戸外で過ごす時間を分類した15時間という設定が不適切であったという二つの可能性があるが,いずれが正しいかは明らかではなかった.
また,家の外でのみ喫煙する家族を持つ子供の場合,週15時間以上戸外で過ごす子供の毛髪中ニコチンレベルは,戸外で過ごす時間が15時間未満の子供よりも低値を示したが,15時間未満の子供のニコチンレベルは家の中でも喫煙する家族を持つ子供と同程度であった.
この結果からも両親への聞き取り調査結果が正確に得られなかったことが示唆されるが,それ以外の原因として,家の外で喫煙していた家族の衣服や呼気にタバコの煙が残ったまま家の中に入ったことや,過去に家の中で喫煙していた時のタバコの煙の微粒子が壁や家具に残っていたことが考えられる.
本研究から長期 ETS 曝露を評価する方法として毛髪中ニコチン法が有効であること,および喫煙する家族(特に母親)を持つ子供は ETS 曝露していることが明らかとなった.
喫煙場所を家の外に限定することが子供の ETS 曝露を避ける手段として有効であるか否かについてはさらに研究が必要である.
runより:化学物質過敏症患者の家族が喫煙してると受動喫煙するという事でもあります。