・一般演題
薬物アレルギー3
座長:藤本和久(日本医科大学千葉北総病院皮膚科)
427.安息香酸ベンジルによる播種状紅斑丘疹型薬疹
古田淳一
筑波大学 人間総合科学研究科 皮膚病態医学分野
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【患者】30歳,女性.【既往歴】不妊症治療のためこれまで10回ほど黄体ホルモン製剤(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン)の筋注を施行されていた.
【現病歴】2005年11月9日に筋注を受けたところ,同日夕,同部に浮腫性紅斑が生じ翌日までに消退した.
それを医師に申し出ることなく2006年1月11日に再び筋注を受けた.
翌日,悪寒を伴う発熱と全身性の紅斑が出現,持続するため1月16日に当院紹介入院となった.
【入院時身体所見】体温37.8℃,略全身に痒みを伴う紅斑が広がっていた.
前腕屈側皮膚は浮腫状で一部がびらん化していた.口腔,眼,外陰粘膜に異常なし.
【入院時検査所見】白血球8900/μL,うち好酸球8.8%.CRP 5.41mg/dl.肝腎機能など正常.
【入院後経過】副腎皮質ステロイド全身投与は行わず,補液と抗アレルギー剤内服,ステロイド剤外用で軽快,1月23日退院.入院中に提出した,薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST)は陰性.
成分別パッチテストでは,溶解補助剤として使われている安息香酸ベンジルが濃度1%,10%で陽性だった.対照の健常人5名ではいずれも陰性だった.
以上より安息香酸ベンジルによる播種状紅斑丘疹型薬疹と診断した.
同剤は溶解補助剤として注射薬に添加されていることがあり,またアロマオイルにも含まれることが多いので患者には注意を促した.
第56回日本アレルギー学会秋季学術大会 2006年11月開催