・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/
・http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/070003.pdf
漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
代謝・内分泌疾患
文献
並木隆雄. 漢方薬の動脈硬化に対する基礎的および臨床的検討. 上原記念生命科学財団研究報告集2007; 21: 60-3. 医中誌Web ID: 2008156867
1. 目的
肥満患者に対する防風通聖散エキス顆粒の抗肥満作用の評価、また動脈硬化進展因子であるHS-CRP (high-sensivity-CRP) の推移を評価
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験(封筒法) (RCT-envelope)
3. セッティング
一般病院内科外来
4. 参加者
BMIが25以上の肥満高血圧症患者(拡張期血圧90mmHg以上and/or収縮期血圧140mmHg 以上の患者で、内服前または降圧剤内服中を含む) 。
選択基準は20歳以上80歳未満で、文書で同意を得られた患者。除外基準は、1) 重篤な合併症(心疾患、腎疾患、悪性腫瘍など) 、2) 本試験に影響を及ぼすと考えられる薬剤投与中の患者、3) 妊娠中、授乳中ならびに妊娠の可能性を有する婦人、4) その他、医師が不適当と判断した患者
5. 介入
Arm 1: Boufuu群。従来の治療に加え、防風通聖散エキス顆粒(メーカー不明) 7.5mg/day食前もしくは食間に経口投与。
投与観察期間は12週間。
25名(男性16名、女性9名) 、平均年齢は63.3±12.3歳。
Arm 2: Control群。従来の治療を継続。30名(男性19名、女性11名) 、平均年齢は64.2±10.3歳。
6. 主なアウトカム評価項目
1) 体重、BMI、血圧、脈拍、2) 空腹時血糖値、Hba1c、インスリン値、3) 総コレステロール、HDL、LDL、中性脂肪、4) 内臓脂肪(CT検査による) 、5) HS-CRPの他、肝機能、腎機能、電解質などの血液生化学検査。1) - 3) は0, 4, 12, 24週に、4) は0, 24週後、5) は0, 4, 8, 12, 24週に実施。
7. 主な結果
体重は、Control群で71.79±10.16kg (0週) から70.30±10.36kg (24週) と1.49kg (-2.8%)の減少に対し、Boufuu群では77.82±17.53kg (0週) から76.63±17.66kg (24週) と1.16kg (-1.5%) 減少であった。しかし両群間に有意差は認めなかった。BMIも27.80±.2.56 (0週) から27.22±2.79 (24週) と2.1%の減少に対し、Boufuu群では30.62±5.81 (0週) から30.14±5.78 (24週) と1.6%の減少であった。
HS-CRPの推移は、Control群では0週で1199.00±1040.46μg/dLであったが、徐々に上昇し、24週には2113.54±4524.08μg/dLと914.54μg/dLと上昇した。一方Boufuu群では0週で2918.17±4239.03μg/dL、4週後に一過性に5229.26±11066.85μg/dL と上昇したが、24週では2694.92±3606.66μg/dLと223.25μg/d減少した。
8. 結論
体重とBMIではControl群よりもBoufuu群が劣っているが、HS-CRPでは24週後にはBoufuu群がControl群よりも減少傾向である。
9. 漢方的考察
同研究の基礎医学的な評価として、桂枝茯苓丸の動脈硬化抑制作用に関する研究についても同論文で報告されている。
10. 論文中の安全性評価
記載なし
11. Abstractorのコメント
動脈硬化の判定にHS-CRPをアウトカムと設定したRCT。
漢方薬の研究領域に新たなる方法を取り入れた意味で大変に興味深い。
体重、BMIについてはnegativeな結果に終わったが、さらなる研究の発展を期待する。
12. Abstractor and date
鶴岡浩樹 2009.1.26, 2010.6.1