・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/
http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/090004.pdf
漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
代謝・内分泌疾患
文献
蒲原聖可, 川上隆雄, 上馬塲和夫. 統合医療によるメタボリック・シンドロームの予防・診断・治療に対する個別化医療の開発に関する研究. 医科学応用研究財団研究報告 2009; 26: 399-403.
1. 目的
防風通聖散が肥満を改善させるかどうか評価
2. 研究デザイン
二重盲検ランダム化比較試験(DB-RCT)
3. セッティング
富山県の医療施設
4. 参加者
55-65歳の住民2000名に依頼状を郵送。同意を得た肥満者から問診、血液検査、心電図で心疾患や重篤な肝・腎疾患を持たず下痢のない例120名を抽出。
5. 介入
Arm 1: 実薬群70名。カネボウ防風通聖散細粒エキス製剤を2ヶ月間、7.5g 分2/日を食 間あるいは食後1時間以上経過後に投与
Arm 2: 偽薬群50名。5%防風通聖散細粒エキス含有したプラセボ薬を同様の手法で投与
6. 主なアウトカム評価項目
試験開始前, 2, 4, 8週後のWHOQOL26、東洋医学的問診、血清生化学的指標、IRI、HOMA-R
7. 主な結果
実薬群67名、偽薬群45名が試験を完了し、計112名について解析を実施。
男/女比は実薬群19/48、偽薬群11/34、アドレナリンβ3受容体遺伝子多型(SNP) 保因者は実薬群18名(Arg hetero18) /67名、偽薬群18名(Arg hetero15, Arg homo 3) /45名で、両群合わせて36名/112名(32.1%) であった。
実薬群と偽薬群のプロフィール比較では有意差は認めず、平均服薬コンプライアンスも実薬群で95±7%、偽薬群で96±4%と良好で両群に差はなかった。体重は生理的に1日1.5kg程度の変動を示すことが知られていることから今回の試験では1.5kg以上の減少を認めた例を体重低下とみなした。
実薬群と偽薬群の体重減少例の出現率を比較したところ実薬群22%で、偽薬群の7%より有意に高値であった(P<0.05) 。
8. 結論
55-65歳の肥満者では防風通聖散によって体重改善効果が示唆される。
9. 漢方的考察
防風通聖散が有効か無効かを分ける要因として、β3受容体遺伝子多型の有無だけでなく、証も含めた他の因子が推定された。
10. 論文中の安全性評価
記載なし
11. Abstractorのコメント
肥満者に対する防風通聖散の有効性を検証した貴重なDB-RCTである。
報告書の一部として、ショート・リポートで紹介されたため、研究デザインなどの詳細は不明であるが、共同著者の「上馬場和夫, 許鳳浩. 交感神経β3受容体遺伝子多型と防風通聖散の効果との関連. 日本東洋医学雑誌2009; 54: S225.」を参考に、本抄録を作成した。
原著が期待される。
12. Abstractor and date
鶴岡浩樹 2010.6.1