黄連解毒湯の精神病性障害患者の急性期における睡眠障害に対する有効性 | 化学物質過敏症 runのブログ

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漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース

神経系の疾患(アルツハイマー病を含む)
1. 目的
黄連解毒湯の精神病性障害患者の急性期における睡眠障害に対する有効性
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験(封筒法) (RCT-envelope)
3. セッティング
実施施設に関する記載なし(著者は慶應義塾大学病院漢方クリニック、同大学医学部精神神経科)
4. 参加者
主訴に睡眠障害を含むDSM-IVにより精神分裂病、分裂感情障害、分裂病様障害、短期精神病性障害と診断され、未投薬の男性患者18名
5. 介入
Arm 1: ハロペリドールによる通常治療とツムラ黄連解毒湯エキス顆粒2.5g 1日3回4週間内服。9名
Arm 2: ハロペリドールによる通常治療のみで4週間。9名
6. 主なアウトカム評価項目
不眠時の頓服薬ニトラゼパムの使用量、Brief Psychiatric Rating Scale (BPRS) による精神症状の評価
7. 主な結果
精神症状の評価で、各時間帯における比較では、Arm 1とArm 2で差を認めなかった。ニトラゼパムの内服量においても両群間で有意差を認めなかった。
8. 結論
急性精神分裂病および他の精神病性障害患者の急性期睡眠障害に対し、黄連解毒湯と抗精神病薬の併用は、精神症状の思考障害改善傾向とニトラゼパムの使用量減少傾向を認める。
9. 漢方的考察
なし
10. 論文中の安全性評価
記載なし
11. Abstractorのコメント
急性精神分裂病患者等の睡眠障害に抗精神病薬と黄連解毒湯を併用し、黄連解毒湯の非投与患者と比較した興味深い臨床研究である。

方法で「両群ともに、抗精神病薬はハロペリドールのみを、抗パーキンソン薬はビぺリデンのみを用いて治療を行った」と記載しているが、その投与症例数は不明である。

さらに、「治療医は黄連解毒湯の併用の有無とは無関係にハロペリドールを用いた通常治療を開始した」と記載しており、この2種の薬剤の治療対象者に関する情報が不明確であった。

また、「精神症状の思考障害改善傾向とニトラゼパムの使用量減少傾向を認めた。」と黄連解毒湯投与群とコントロール群で有意な差を認めていないこと記載しているが、要旨では、「黄連解毒湯の追加投与が睡眠障害に有効であることが示唆される」とあり、結果での記載と要旨の結論が異なっていると思われる。

いずれにしろ、症例数を増すことで黄連解毒湯の睡眠障害に対する有効性が明らかになる可能性があり、この領域の漢方薬の薬効を明らかにする上で、意義のある臨床研究である。
12. Abstractor and date
後藤博三 2008.9.11, 2010.6.1