・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/
・http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/940010.pdf
漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
神経系の疾患(アルツハイマー病を含む)
1. 目的
DS-4773の酸棗仁湯をコントロール薬とした鎮静効果に対する有効性と安全性
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験(cross over) (RCT-cross over)
3. セッティング
東京大学医学部附属病院精神神経科1施設、病院精神科5施設、診療所2施設
4. 参加者
内科、心療内科、神経科領域の疾患を持ち不眠、日中のイライラ、日中の不機嫌、日中の意欲不足、朝の目覚め爽快感がない等の5項目を主訴とする15才以上の男女79名
5. 介入
Arm 1: DS-4773 (酸棗仁乾燥エキス0.5g、茯苓乾燥エキス0.1g、山梔子0.2g) 含有した顆粒剤1包1gを1日2回朝食前と就寝前投与し2週間内服。79名
Arm 2: 医療用酸棗仁湯エキス顆粒(メーカー不明) 1包3.75gを1日2回朝食前と就寝前投与し2週間内服。79名
6. 主なアウトカム評価項目
寝つき、熟眠感、朝の目覚めの気分、日中の気分、日中の体調、日中の意欲、食欲不振、便秘、下痢について4段階で評価
7. 主な結果
参加者のうち除外・脱落例を除いた59名が解析対象となった。
症状別改善度のやや改善以上は、Arm 1/Arm 2 (%) で、寝つき63.5/51.9、熟眠感63.6/45.5、朝の目覚めの気分64.9/50.9、日中の気分50.0/37.5、日中の体調47.4/38.6、日中の意欲35.8/26.4、食欲不振27.8/23.2、便秘41.2/35.3、下痢100/75.0であった。
群間の比較では、寝つき、熟眠感、朝の目覚めの気分において、Arm 1はArm 2に比較して有意に改善した。
日中の体調、日中の意欲において、Arm 1はArm 2に比較して有意に改善した。
8. 結論
DS-4773は、酸棗仁湯エキス顆粒に比較して、より優れた鎮静効果がある。
9. 漢方的考察
なし。
10. 論文中の安全性評価
安全性評価は68名において検討された。
DS-4773では、副作用なし64名(94.1%) 、コントロール薬では。
副作用なし61名(89.7%) であった。
投薬中止を必要とする副作用として動悸・めまい・不安を各1名ずつ認めた。
11. Abstractorのコメント
クロスオーバー試験によりDS-4773の効果を、酸棗仁湯エキス顆粒をコントロール薬として評価した良くデザインされた臨床研究である。
しかし、薬剤の交替時にwashout期間が無く最初に投与された薬剤の効果の影響が残存する可能性がある。
また、服薬状況に問題があった症例の表をみると、2週間評価の採否の時点でDS-4773は7名、コントロール薬は1名と、最初にDS-4773が、多くの参加者に投与されていた可能性が示唆され、薬剤の効果が強く生じた可能性がある。
また、併用薬剤の項目で、睡眠障害が持続するときは、睡眠導入薬等の併用が許可されており、効果の弱い被検薬で、睡眠導入薬等の併用により、かえって症状改善が強く認められる可能性がある。
併用薬剤の記載など検討を加えることで、DS-4773の有効性を明らかにすることができる可能性があり、漢方薬の薬効を明らかにする上で優れた臨床研究となると考えられる。
12. Abstractor and date
後藤博三 2008.8.18, 2010.6.1