・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/
・http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/060004.pdf
漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
神経系の疾患(アルツハイマー病を含む)
文献
丸山哲弘. 片頭痛予防における呉茱萸湯の有用性に関する研究 塩酸ロメリジンとのオープン・クロスオーバー試験. 痛みと漢方2006; 16: 30-9. 医中誌Web ID: 2006303125
1. 目的
呉茱萸湯の片頭痛に対する有効性と安全性
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験(cross over) (RCT-cross over)
3. セッティング
実施施設に関する記載なし(著者は飯田市立病院総合診療科)
4. 参加者
片頭痛の罹患期間が1年以上で、平均月に3回以上の頭痛発作を有する患者14名
5. 介入
Arm 1: ツムラ呉茱萸湯エキス顆粒2.5gを1日3回28日間内服。14名
Arm 2: 塩酸ロメリジン5mgを1日2回28日間内服。14名
なお、wash-out期間は2週間。頭痛発作時のトリブタン系薬剤の内服は可とした。
6. 主なアウトカム評価項目
頭痛発作頻度、visual analogue scale (VAS) による評価、トリブタン系薬剤の内服回数、トリブタン系薬剤に対する反応(発作消失時間) を開始前(28日) 、第1相(28日) 、休薬相(14日) 、第2相(28日) 、最終相(28日) において評価した。
7. 主な結果
頭痛発作頻度、VASピーク値、トリブタン系薬剤の内服錠数のいずれにおいても、クロスオーバーデザインによる薬剤効果の差の検定の結果、Arm 1がArm 2に比較して優れた結果であった。
8. 結論
片頭痛の頭痛発作に対して、呉茱萸湯は塩酸ロメリジンに比較してより有効である。
9. 漢方的考察
呉茱萸湯の目標証である弦遅脈、滑白苔、振水音、心下痞鞕、四肢厥冷をそれぞれ、71.4%、57.1%、64.3%、85.7%、100%に認めた。
10. 論文中の安全性評価
塩酸ロメリジン内服者の2名において眠気を認めた。呉茱萸湯内服者において副作用を認めなかった。
11. Abstractorのコメント
呉茱萸湯の片頭痛に対する効果を塩酸ロメリジンをコントロール薬として評価した臨床研究で、呉茱萸湯の頭痛発作予防効果を明らかにした優れた研究である。
一方、著者が考察に述べているように、コントロール薬として用いた塩酸ロメリジンの効果が、これまでの臨床研究で示されているよりも弱い。
その点を考慮すると、参加者の診断が片頭痛で問題ないか、あるいはすでに塩酸ロメリジンの内服例で効果が十分でない症例であったかなどの点が明らかにされることが望ましい。
さらに、グループ2の呉茱萸湯を第1相で内服した群においては、第2相で塩酸ロメリジン開始時に発作頻度と程度が十分前値に復しておらず休薬期間が短かったと考えられる。
その結果、第2相で呉茱萸湯を内服したグループ1において、呉茱萸湯の効果がより強く表れていると考えられる。
また、服薬コンプライアンスが塩酸ロメリジンで93%、呉茱萸湯内服者で74%と呉茱萸湯内服者で有意に低く、次回の検討では、呉茱萸湯の内服状況を改善させることも重要である。
しかし、本研究により呉茱萸湯の片頭痛の予防的治療効果が明らかにされ、今後さらなる種々の方剤での有効性の評価が望まれる。
12. Abstractor and date
後藤博三 2008.11.17, 2010.6.1