帰脾湯のアルツハイマー型認知症に対する有効性と安全性 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/

http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/070005.pdf
漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
070005
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神経系の疾患(アルツハイマー病を含む)

1. 目的
帰脾湯のアルツハイマー型認知症に対する有効性と安全性
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験(RCT)
3. セッティング
阪和第二泉北病院
4. 参加者
DSM-IVによりアルツハイマー病と診断され、ハチンスキー虚血スコア4点以下でMini-Mental State Examination (MMSE) が10-26点の高齢者75名。

著しい高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心疾患、腎不全、うつ病患者とMRI上著しい脳梗塞を有する患者は除外した。
5. 介入
Arm 1: 非薬物治療群。20名
Arm 2: ツムラ牛車腎気丸エキス顆粒7.5gを分3で1日食後3回3ヶ月間内服。24名
Arm 3: ツムラ帰脾湯エキス顆粒7.5gを分3で1日食後3回3ヶ月間内服。20名
6. 主なアウトカム評価項目
MMSE、activities of daily living (ADL) を開始時と3ヶ月後に全例に施行し、脳血流測定のためのSPECTを開始時と3ヶ月後にArm 2から6名、Arm 3から4名に実施した(SPECT実施者をどのように選択したか記載無し) 。
7. 主な結果
参加者75名中、解析対象となったのは64名であった。

MMSEは、Arm 3で3ヶ月後開始時に比べ有意に改善し、Arm 1とArm 2に比較しても有意に改善した。

特に、失見当識と注意力の改善が著しかった。

ADLは3群間で差を認めず、開始時と3ヶ月後でも変化を認めなかったSPECTによる脳血流の明らかな変化は認められなかった。
8. 結論
帰脾湯はアルツハイマー型認知症に対して有効な治療薬である。
9. 漢方的考察
なし
10. 論文中の安全性評価
Arm 2で下痢1名、Arm 3で血圧上昇1名を生じ内服中止となった。
11. Abstractorのコメント
帰脾湯のアルツハイマー型認知症に対する有効性を非漢方薬投与群と牛車腎気丸投与群を対象として評価した臨床研究で、帰脾湯の有効性を明らかにした優れた内容である。

著者らは、被検薬として牛車腎気丸を選んだ理由として、遠志を含んでいないことや認知機能に関連する報告がなされていないことを上げている。しかし、牛車腎気丸から牛膝と車前子を除いた八味地黄丸で、すでに高齢者認知症に対する有効性に関する報告がなされており、本研究では結果として帰脾湯のみ有意にMMSEの改善を認めたが、披検薬として適切でないと考えられた。

また、脳血流に関して差がでなかったことに関して、考察で症例数が少ないことを上げているが、SPECT実施者をどのように選別したのか記載が望まれる。脱落例に関してもArm 1の脱落数の記載も必要である。

以上の点のような、より詳細な記載が望まれる部分もあるが、本臨床研究により帰脾湯の認知症患者に対する有効が明らかにされ、今後、作用機序の検討や多数例での長期効果などさらなる検討が期待される。
12. Abstractor and date
後藤博三 2008.11.28, 2010.6.1