抑肝散の認知症の行動と心理症状に対する有効性と 安全性 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/

http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/090007.pdf
漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
神経系の疾患(アルツハイマー病を含む)
1. 目的
抑肝散の認知症の行動と心理症状に対する高齢者アルツハイマー病における有効性と 安全性
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験(RCT)
3. セッティング
九州大学関連病院(施設数の記載なし)
4. 参加者
認知症はDSM-IVにより診断し、アルツハイマー病はNINCDS-ADRDAにより診断した患者。

開始前にsulpiride 50 mg/dayを2週間継続投与してMMSE (Mini-Mental State Examination) が6以上23以下でNPI (Neuropsychiatric Inventory) が6以上の患者(男性2名、女性13名、平均年齢80.2±4.0才) 15名
5. 介入
Arm 1: sulpiride 50 mg/dayの内服を継続し、さらに抑肝散(メーカー不明) 2.5g (1.5gエキス含有) を1日3回内服。

12週間投与。10名
Arm 2: sulpiride 50 mg/dayの内服を継続のみ。5名
なお、sulpiride 50 mg/dayは4週毎の評価中にNPIの各サブスコアの1つ以上が8以上になる場合は増量し、すべて4未満になる場合は減量した。
6. 主なアウトカム評価項目
認知症の行動と心理症状(BPSD) は神経精神科検査票であるNPIで、認知機能はMMSEで、日常生活動作はBarthel Indexで評価した。

評価は、開始時、4週後、8週後、12週後に実施した。
7. 主な結果
Arm 2の1名が著しい浮腫のため除外された。

NPI がArm 1で開始時に比べ8週後、12週後に有意に改善した(p<0.001)が、Arm 2では変化を認めなかった。

12週後のsulpirideの投与量において、Arm 1はArm 2に比べて少なかったが、有意差はなかった。

MMSEとBarthel IndexはArm 1、Arm 2とも開始時に比べ変化しなかった。
8. 結論
抑肝散は高齢者アルツハイマー病の認知症の行動と心理症状の改善に有効で、抗精神病薬の使用量を減量できる可能性がある。
9. 漢方的考察
なし
10. 論文中の安全性評価
Arm 1の2名に低カリウム血症を認めた。また、Arm 1の1名で錐体外路症状を認め、sulpirideを150mg/dayから100mg/dayへ減量した。
11. Abstractorのコメント
高齢者アルツハイマー病患者に対する抑肝散の有効性を、行動と心理症状、認知機能、日常生活動作など多角的に12週間にわたり評価した貴重な臨床研究である。

開始時の段階で両群ともsulpirideが処方されており、抑肝散の上乗せデザインの検討となり、抑肝散のみの効果が十分評価できていない可能性がある。また、Arm 2は症例数が少ないため有意差がでていないが、NPIやMMSEの経過をみると症例を追加することで開始時に比べ有意な改善を認める可能性がある。

しかし、抑肝散投与により、少数例でもNPIの改善と抗精神病薬の減量効果が示唆されており、今後、症例数を追加し、適切なコントロール薬を用いることで、抑肝散の精神科領域における有効性をさらに明らかにできると考えられる。
12. Abstractor and date
後藤博三 2010.6.1